最新記事

南シナ海

中国が南シナ海で新たに「人工島の街」建設を計画

Beijing Pushes Ahead With New South China Sea Base

2019年3月19日(火)14時38分
ジェイソン・レモン

こんなのをもう1つ? 南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島に中国が建設した人工島(2017年) Erik De Castro- REUTERS

<国際社会の批判をものともせず三沙市がツリー島をはじめ3つの島を使った開発計画を発表。アメリカは今度こそ黙認できなくなる?>

国際的な懸念の高まりやドナルド・トランプ米政権からの厳しい批判にもかかわらず、中国は南シナ海で新しい人工島の街、「アイランド・シティー」の造成を推し進める計画だ。

中国が自国領土と主張している同海域最南端の三沙市は、ウッディー島(中国名は永興島)とより小規模な2つの島――ツリー島(趙述島)とドラモンド島(晋卿島)――を「国の戦略的サービスおよび物流の基地」にする計画だ、と発表した。3月18日付の香港紙、サウスチャイナ・モーニングポストが報じた。

同紙によれば、三沙市の肖傑市長(共産党委員会書記)は声明を発表。「これらの島と岩礁について、その補完的な関係を考慮に入れつつ、それぞれ機能の異なる総合的な開発を慎重に計画する」と述べた。彼はまた、開発は習近平国家主席の命令によるもので、「満足のいく成果」を挙げるためには地元当局者たちが「積極的にイニシアチブを示していく」とも述べた。

米ランド研究所でアジア太平洋の安全保障問題と外交政策を専門とするジェフリー・エングストローム上級政策アナリストは、このプロジェクトは米中間の緊張を高めるものになる可能性があると指摘した。

米軍の艦船や航空機が定期的に監視

「ウッディー島とその周辺での建設計画は、まだ初期段階にあるように見える」とエングストロームは言う。「だがもし建設されれば、中国人民解放軍海軍、海警局や海上民兵は南シナ海において、これまで以上にプレゼンスを拡大し、作戦をより迅速に展開できるようになる」とも指摘。「そうなれば南シナ海の領有権を主張している他の当事国や、同海域でアメリカが定期的に行っている示威活動に拍車がかかり、緊張が高まる可能性がある」と述べた。

中国は近年、国際社会からの批判にもかかわらず南シナ海での影響範囲を拡大しており、この問題をめぐる緊張は高まっている。中国は同海域を自国の歴史的領土だと主張するが、仲裁裁判所は2016年にこれを否定した。アメリカは中国の主張に反対を表明し、定期的に航行の自由作戦と呼ばれる任務を実施。米軍の艦船や航空機を同海域に派遣して監視を行っている。

3月14日には、アメリカが南シナ海の上空に「通常の訓練飛行」として、B52戦略爆撃機2機を派遣した。太平洋空軍の報道官はこの活動について「米航空機は、同盟諸国やパートナー諸国、自由で開かれたインド太平洋を支援するために、恒常的に南シナ海で作戦行動を展開する」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エアバス、中国2カ所目の組立ライン開設 主力単通路

ビジネス

日経平均は小反落、TOPIX最高値 高市政権の経済

ビジネス

英CPI、9月は前年比+3.8%で横ばい 予想下回

ビジネス

午後3時のドルは151円後半、1週間ぶり高値圏で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中