最新記事

白人至上主義

NZテロで再燃、トランプの白人至上主義疑惑

Only 'Gunman and the Devil' Behind New Zealand Attack

2019年3月18日(月)17時15分
ジェイソン・レモン

ニュージーランドにまで飛び火した白人極右の憎悪(銃撃のあったモスクで祈りを捧げる生徒たち、3月18日)Jorge Silva-REUTERS

<トランプはニュージーランドの2つのモスクで起きた銃乱射事件後も、白人至上主義の容疑者を非難していない>

政治コメンテーターで米共和党ストラテジストを務めるアリス・スチュワートは、ニュージーランド南部クライストチャーチの2つのモスク(イスラム教の礼拝所)で白人至上主義者の男が銃を乱射した事件後の3月17日、ドナルド・トランプ米大統領が白人至上主義者を勢い付けた、という人々にそれは筋違いだと反論した。

トランプは、50人が死亡し数十人が負傷した銃乱射事件があった3月15日、「白人至上主義が広まっていると思うか」との記者団の質問に、白人至上主義者は「ごく少数」で、脅威ではないとの見方を示し、多くの批判を浴びている。クライストチャーチの警察がモスク襲撃の容疑者として訴追されたオーストラリア人のブレントン・タラント(28)は、犯行直前にソーシャルメディアに投稿した犯行予告で、トランプを「新たな白人アイデンティティの象徴」「我々と目的を共有する」などと称えていた(ただし政治家としてのトランプの手腕については酷評した)。

トランプ批判に対し、米ABCの「ディス・ウィーク」に出演したスチュワートはこう反論した。「無責任だと思う。私たちが今目にしているのはむしろ、何でもトランプ大統領のせいにする魔女狩りだ」

「ニュージーランドの事件で、非難されるべきは2人しかいない。1人は犯人、もう1人は悪魔、それだけだ」と、彼女はこう続けた。「もっと冷静になって議論する必要がある。この銃乱射事件は銃撃犯の責任だ」

白人至上主義者を黙認?

トランプは就任前から「人種差別主義者」だと批判され、実際に自身に忠実な支持者の中に白人至上主義者が紛れていても目をつぶってきた。すべてのイスラム教徒を入国禁止にしようとしたこともある。

就任後の2017年8月に米バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義団体と反対派が衝突し、反対派の女性1人が死亡した事件では、女性の死の責任は「双方に」あると発言。白人至上主義者にも「素晴らしい人々」が含まれていたと語った。事件当時、白人至上主義者はたいまつを手に行進しながら「ユダヤ人は入れない!黒人は入れない!移民は入れない!」と唱えていたにもかかわらず。

ニック・マルバニー米大統領首席補佐官代行は3月17日、「FOXニュース・サンデー」で、トランプは「白人至上主義者ではない」と擁護した。

「海外であれ国内であれ、こうした事件が起きるたびに『大統領のせいに違いない』と言う人が現れて、何もかもが政治問題化される。それが今日のアメリカの政治体制を傷つけている」

だが米史上初の女性イスラム教徒の下院議員となった2人のうち、パレスチナ系で民主党のラシダ・タリーブ(ミシガン州選出)は3月17日、こう批判した。「少数だ、と言って済ませてはならない」と、タリーブは米CNNの「ステート・オブ・ザ・ユニオン」に出演して言った。「あまりに多くの命が奪われた」

「トランプは声を張り上げ、(白人至上主義者のことを)はっきりと非難する必要がある」

(翻訳:河原里香)

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中