最新記事

動物

空港に残されたスーツケースから絶滅危惧種含むカメ1529匹 フィリピン密輸トレンドは希少動物?

2019年3月7日(木)17時50分
大塚智彦(PanAsiaNews)

スーツケースには末端価格1000万円近い「ブツ」が...... euronews (in English) / YouTube

<ドゥテルテ大統領の強硬な麻薬対策が功を奏し薬物の密輸は減ったが、一方で増えてきた密輸品は......>

フィリピンのマニラ首都圏にあるニノイ・アキノ国際空港で3月3日、絶滅危惧種に指定され取引が禁止されているカメ約1500匹が乗客のスーツケースから発見され、その場で押収された。

荷物の持ち主は違法な密輸の発覚を恐れたためか荷物を放置して空港外に逃走して行方をくらませており、フィリピン警察が税関当局と協力して行方を捜索している。

フィリピンは近年、麻薬密輸の東南アジア地域の拠点として利用され、中南米からコカインが流入するなど、生産地と消費地をつなぐ密輸の中継基地として国際的麻薬シンジケートから注目されている。

その一方で違法な動物密輸も多く摘発されるなど、希少動物密輸の一大拠点となっている。その背景には空港の税関職員や警察官などの腐敗、麻薬犯罪への超法規的措置による厳しい取り締まりで犯罪組織が「麻薬から希少動物へ」と"メニュー替え"していることなども考えられている。

3月3日、ニノイ・アキノ国際空港第3ターミナルに到着した香港発フィリピン航空311便の乗客らが入国管理で手続きを済ませ、預け荷物をピックアップして税関検査に向かった後、4つのスーツケースが残されていたという。

不審に思った税関職員がX線検査で調べたところ不審物があり、職権でスーツケースを開けたところ、次々と生きたカメが見つかった。カメはいずれも手足を灰色のガムテープ状のもので固定され、衣服や靴の中に巧妙に隠されていたという。

税関職員と警察官が調べたところインドホシガメ、アカアシガメ、ケヅメリクガメ、ミシシッピアカミミガメの4種類、計1529匹を確認し押収した。

4種のカメのうちペットとして一般的に飼育されているミシシッピアカミミガメを除いた3種は国際自然保護連盟(IUCN)のよって絶滅の危機に瀕した「危急種」としてレッドリストに分類されており、取引や売買が禁止されている。

荷物の持ち主は逃走、行方不明

肝心の密輸容疑者であるスーツケースの所有者は空港内にいなかったことから、空港警察では密輸の発覚を恐れて逃走したものとみている。地元紙に税関当局者は、預け荷物をピックアップする場所や税関付近にある「違法な密輸に関する厳しい刑罰が書かれた注意の掲示」を読んだ容疑者が密輸を断念して荷物を置いたまま逃走したとの見方を示している。

もっとも預け荷物は香港でのチェックインの際にどの乗客の荷物かはわかるようになっており、警察ではこれを手掛かりにして入国審査での容疑者のパスポート情報と合わせて個人を特定することは困難でないとみている。

税関当局や空港警察では、1529匹のカメはフィリピン国内で売買するか、第3国にさらに密輸する目的に持ち込まれたとみており、ブラックマーケットでの価格は約450万ペソ(約970万円)になると推計している。

輸出された香港、輸入されたフィリピンともに希少動物の密輸には厳罰主義で臨んでおり、容疑者には最高で1億4000万円相当の罰金と10年間の禁固刑が適用される可能性があるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中