最新記事

地球

北磁極が想定を超えるペースで移動していることが明らかになった

2019年2月12日(火)18時00分
松岡由希子

地球の北磁極はカナダからシベリアに向けて移動している NOAA NCEI/CIRES

<2015年以降、地球の北磁極はカナダからシベリアに向けて想定を超えるペースで移動していることが明らかになった>

地球の北磁極は、カナダからシベリアに向けて北西へと継続的に移動している。そのため、アメリカ海洋大気庁(NOAA)国立環境情報センター(NCEI)では、世界磁気モデル(WMM)を5年ごとに更新してきた。

北磁極の移動加速に伴い、世界磁気モデルを修正

しかし、最新モデル「WMM2015」をリリースした2015年以降、北磁極が想定を超えるペースで移動していることが明らかとなり、2019年末に予定されている更新版「WMM2020」のリリースに先立って、2019年2月4日、2015年以降3年間のデータに基づいて北磁極の変化をより正確に反映させた「WMM2015」の修正版「WMM2015v2」を発表した。

1831年に英探検家ジェイムズ・クラーク・ロスが初めてカナダ北極圏を測定して以来、北磁極は予測不能な方法で移動していることがわかっている。その移動速度は年間15キロメートル程度であったが、1990年代半ばには年間約55キロメートルにまで上がっており、北磁極は、2001年までに北極海に入り、2018年には日付変更線を超えて東半球に入った。

matuoka0212b.jpg北磁極は移動している credit/nature

カナダ直下で液化した鉄が高速で流れている......

北磁極の位置は、なぜこれほど劇的に変動しているのだろうか。

英リーズ大学のフィリップ・リバモア教授らの研究チームは、2016年12月、「カナダ直下で液化した鉄が高速で流れていることが北磁極の急速な移動と関連しているかもしれない」との研究論文を発表した。

これによって、カナダ直下の磁場が弱まっている可能性があるという。リバモア教授は「北磁極の位置は、カナダとシベリアの地下にある2つの巨大な磁場に影響を受けているとみられ、現時点では、シベリアの磁場が勝っているようだ」と分析している。

世界磁気モデルは、海底や航空機のナビゲーション、パラシュート降下などの軍用のほか、アメリカ航空宇宙局(NASA)や連邦航空局(FAA)、農務省林野部といった政府機関でも、調査やマッピング、衛星やアンテナの追跡、航空交通管制(ATC)などで用いられている。

GPSを活用したサービスや地図アプリにも影響が

もちろん、私たちの日常生活にも少なからず関わりのあるものだ。スマートフォンや家庭用電化製品では、世界磁気モデルをベースに、GPS(全地球測位システム)を活用したサービスや地図アプリ、コンパスアプリなどを提供している。

国立環境情報センター(NCEI)によると、「WMM2015v2」は2019年末までの期間限定で運用され、2020年には新たな世界磁気モデルとして「WMM2020」が導入される予定となっている。

Magnetic North drifting toward Russia-RT America

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中