最新記事

ミサイル防衛

中国が極超音速機をも撃ち落とす現代版「万里の長城」を地下に建設

China's New ‘Great Wall’ Can Stop Hypersonic Missiles

2019年1月15日(火)14時00分
トム・オコナー

中国は急速に軍備を進化させている(写真は2015年11月3日、北京の天安門広場を更新する弾道ミサイル) Damir Sagolj-REUTERS

<中国の科学者はが山岳地帯の地下深くにあるという極超音速ミサイルの迎撃も可能な巨大防衛設備の存在を明言>

中国が、地下に広大な防衛施設を築いており、それはもはや迎撃不可能とされてきた最新鋭ミサイルも撃ち落とせる施設だと、ある専門家が明かした。

中国の国防への貢献が認められ、1月8日に国家最高科学技術賞を受賞した銭七虎は共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙環球時報に対して、中国は地下深くにもう1つの「万里の長城」を構築した、と語った。銭はここにある一連のミサイル関連施設を「最終防衛ライン」と呼ぶ。

同施設は山岳地帯の地下にあり、その厳しい地形だけでも、大部分の通常兵器から地下基地を守るのに十分だとされている。だが銭は露出部分を攻撃から守り、またバンカーバスター(地中貫通爆弾)から施設を守るために、施設の防衛機能をさらに強化したと言われている。

銭は、少なくともマッハ5、つまり音速の5倍の速度(時速約6110キロ)で飛ぶ極超音速ミサイルが飛来した場合に、ほかのミサイル迎撃システムが対応できなくても、同施設なら可能だとも語った。

「盾(防御)」の進歩は、「槍(武器)」の進歩に追いついていかなければならない。最新の攻撃用兵器が新たな挑戦をもたらすなか、「我が国の防衛技術はタイムリーな進化を遂げている」と銭は同紙に語った。

極超音速分野での開発競争が激化

かつて人民解放軍の少将だった銭(82)は、中国国務院が運営する政府機関である中国科学院と中国工程院の両方に所属している。国家最高科学技術賞の受賞者は1月8日、北京の人民大会堂で発表され、銭はレーダーの専門家である劉永坦と共に同賞を受賞。賞金は約118万ドルにのぼる。

1月11日付の環球時報に掲載されたインタビューの中で銭は自らの研究について、アメリカやロシアなどが超音速兵器の開発を進め、地政学的な不確実性が増したことも「万里の長城」建設の動機の一つだった、と語った。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2018年3月の年次教書演説の中で、音速の10倍の速度で飛行するとされる極超音速巡行ミサイル「キンジャル」と、音速の最大20倍で飛行するとされる極超音速滑空兵器「アバンガルド」を発表。どんなミサイル防衛網にも撃ち落とせず、「無敵」と説明した。

中国も極超音速ミサイルの開発には中国も乗り出しており、2018年8月、中国航天空気動力技術研究院は極超音速航空機「星空2号」の実験を行ったと発表。政府系英字紙チャイナ・デイリーによれば、「星空2号」は機体の衝撃波から揚力を得ることができる。最高速度はマッハ6を記録し、高度は約29キロに達した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日米電話会談WSJ報道、政府が改めて一部否定 共同

ビジネス

EXCLUSIVE-中国2企業がベトナム5G契約獲

ワールド

トランプ氏、関税収入で所得税撤廃も

ビジネス

伊銀モンテ・パスキの同業買収、当局が捜査=関係者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中