最新記事

中国

米中関係「四十にして惑う」

2019年1月2日(水)21時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

昨年12月29日にも、習近平はトランプの要望に応じて、米中首脳による国際電話を交わしたと、12月31日付の人民日報海外版が報道している

トランプは習近平に「米中関係は非常に重要だ。全世界が強い関心を寄せている。私は習近平主席との良好な関係をかけがえのないものとして大切に思っている。アルゼンチンで得たコンセンサスが対話に発展し、両国と世界に有利な成果をもたらすことを期待し、うれしく思っている」と述べた。

習近平はトランプに「私も大統領同様、中米関係が安定的に発展することに賛同します。現在、われわれ両国は非常に重要な段階に差し掛かっています。アルゼンチンで得たコンセンサスを、両国は積極的に実行に移そうと努力している。互いが互利互恵の成果を得るよう、そして世界に有利な協議ができるよう、希望しています」と答えた。

ペンスに「黒鳥の歌」を歌わせるトランプ

胡錦濤政権のころ、当時の温家宝首相は、よく海外で平然と「中国の政治体制改革」を論じていた。中共中央では禁じられているはずなのに、当時の胡錦濤国家主席は批判もせず触れもせず、温家宝に好きなように言わせていた。そこで筆者は温家宝のこのメッセージを「白鳥の歌」と名付けたことがある(『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』)。

それになぞらえて、今度はペンス副大統領の激しい対中批判(たとえば昨年10月4日のハドソン研究所におけるスピーチなど)を、「黒鳥の歌」と名付けることにした(『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』p.286)。

なぜなら、トランプはペンスに対中攻撃をさせておきながら、素知らぬ顔で、習近平には「かけがえのない友情」などと平気で讃辞を送るからだ。

環球時報の評論および年末年始の米中両首脳の電話会談や祝賀メッセージを見る限り、2019年の米中関係は、貿易摩擦に関しては双方が適宜譲歩し、中国の国家戦略「中国製造2025」に関しては双方ともに絶対に譲らない二面性を保ちながら進んでいくのではないかと思われる。 

endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ノルウェージャン、利益見通しまた引き上げ クルー

ワールド

豪中銀、5月会合で利上げも検討 インフレリスク上昇

ワールド

豪NZがニューカレドニアに輸送機派遣、自国民退避へ

ビジネス

サウジ国営航空がエアバス機大量発注、ボーイングに陰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 8

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中