最新記事

ブレグジット

イギリスのEU離脱劇、メイ首相に残された「3つの選択肢」

2019年1月18日(金)09時06分

●合意なき離脱

合意なき離脱に関しては、英議会の大多数と多くの企業が猛反対しているが、議会が新たな提案に合意しない限りは実現することになる。

ある有力議員は「メイ氏の提案が嫌だというだけでは不十分で、何らかの合意を代わりにまとめなければならない。さもないと合意なしで離脱することになる」と警告した。

合意なき離脱に移行期間はなく、突然迎えることになる。国際展開する企業には悪夢である半面、EUと完全に縁を切りたい強硬離脱派にとっては夢がかなう。

英国は世界貿易機関(WTO)に加盟しており、合意なき離脱後のEUとの関税やその他貿易条件はWTOのルールに基づく。

企業側は既に、合意なき離脱による通関手続きなどを見据えた緊急対策を発動しつつある。

離脱推進派は、短期的に混乱が起きるとしても、ドイツが支配し、中国や米国の後塵を拝するような政治システムから離脱できれば、長期的には英国に繁栄をもたらすと強調している。

●離脱撤回

2016年の国民投票以降、離脱反対派は逆の結果を期待して投票の再実施を求めている。ただメイ氏は繰り返し、16年に離脱に賛成した人たちの意思を踏みにじるとして再実施を否定してきた。

再実施は議会が認めた場合のみ可能だが、現段階で過半数が再実施を支持しているわけではない。

労働党は総選挙を求めており、それが拒否された場合は初めて国民投票の再実施を検討するだろう。コービン党首は古くからの欧州懐疑派で、過去には再実施には反対の考えを表明している。

一方、親EU派の保守党議員ドミニク・グリーブ氏は16日、新たな国民投票の実施ができるようにするための法案を提出した。

議会が再実施に同意すれば、英政府はEUに離脱の延期を要請しなければならなくなる。選挙管理委員会は、国民に対する質問内容について意見をすり合わせる必要も出てくる。

政府高官の間では、国民投票を再実施すれば16年の投票が引き起こした分断がさらに深刻化しかねないと懸念している。今後、EU残留派が多数となれば、離脱推進派は再々実施を迫るかもしれない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中