最新記事

中国経済

中国、地方政府の7割が成長目標引き下げ 内需低迷や米中貿易戦争で悲観論強まる

2019年1月29日(火)15時37分

中国の地方政府の発表によると、同国では31省・直轄市・自治区のうち、少なくとも23省・市・自治区が今年の域内総生産(GDP)伸び率目標を昨年の目標から引き下げた。写真は北京で2016年2月撮影(2019年 ロイター/Damir Sagolj)

中国の地方政府の発表によると、同国では31省・直轄市・自治区のうち、少なくとも23省・市・自治区が今年の域内総生産(GDP)伸び率目標を昨年の目標から引き下げた。

内需低迷や米中貿易戦争で地方政府の間に悲観的な見方が広がっていることが浮き彫りとなった。

昨年、成長率目標を引き下げていたのは17省・直轄市・自治区だった。

GDPで国内3位の山東省は、現時点で今年の目標を発表していない。

四川省、河北省、貴州省、甘粛省、海南省の5省は成長率目標を据え置いた。昨年、目標を据え置いたのは12省だった。

成長率目標を引き上げたのは湖北省のみ。ハイテク産業の拡大が期待できるとしている。

今年の中国のGDP伸び率は、昨年から鈍化するとみられており、地方政府の目標引き下げは、市場の見方に沿ったものとなった。

OCBC銀行(シンガポール)のエコノミスト、トミー・シエ氏は「各省の新たな目標は中国が直面している課題を反映している。輸出主導型の沿海部は米中貿易戦争に起因する不透明感から成長率低下のリスクに直面している」と指摘。中国西部は消費とサービスが拡大しているため、引き続き経済成長の主要なけん引役になるとした。

また、省・地域の成長目標引き下げは、中国政府が今年の成長率目標を低めに設定することを暗示しているとし、恐らく6─6.5%のレンジになるとの見通しを示した。

昨年は、北京市、上海市、浙江省、河南省、四川省、河北省、湖北省など15省・直轄市・自治区が、成長目標を達成もしくは上回った。

ほぼ同数の省・直轄市・自治区は目標を下回った。このうち、内モンゴル自治区、天津市、海南省、黒竜江省、吉林省、新疆ウイグル自治区などは、目標を少なくとも1%ポイント下回った。

対米貿易摩擦を受け、広東、江蘇、福建といった輸出主導型の省は成長目標に届かなかった。

上海にある長江養老保険の首席エコノミストは「輸出の影響を受けやすい中国南部の一部の省に対しては、今年は貿易戦争がさらなる打撃を与える可能性がある」との見方を示した。

目標を最も大きく下回ったのは重慶市で、目標を2.5%ポイント下回った。重慶市は中国のGDPの2.3%を占めるが、当局者によると、産業の再編が進んでいることが重しとなった。

[北京 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中