最新記事

世界情勢

2019年の世界終末時計は、核兵器と気候変動のリスクで「終末2分前」

Doomsday Clock 2019

2019年1月25日(金)13時00分
クリスティナ・マザ

世界終末時計の針は「終末」まで2分の時を示している(写真は昨年2018年の世界時計) Leah Millis-REUTERS

<昨年から時計の針は動いていないが、世界が冷戦時代と同レベルの最悪の危機にあることは変わらない>

米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」が、1947年から世界がどれだけ核戦争による破滅に近づいたかを表している「世界終末時計」では、今年も終末まで2分のところで針が止まっている。

24日に発表された今年の終末時計は、昨年と同じ「世界破滅2分前」を示した。東西冷戦下の1953年に、ソ連の独裁指導者ヨシフ・スターリン書記長が亡くなり、米ソがお互いに核弾頭の標準を向けあったときと同レベルの危機にあることを意味している。

同誌のレイチェル・ブロンソン会長兼CEOはこの結果について、「現在の世界が直面する複雑で恐ろしい現実が、異常な状態であることを示している」と語った。「昨年から変化していないが、それは安定しているという意味ではなく、世界中の指導者と市民に対する強い警鐘と受け止めなければならない」

終末時計は、核兵器によるリスクや気候変動の専門家らノーベル賞受賞者も参加する専門家会議と密接に協議して判断される。終末時計が真夜中に近づくと、世界が文明崩壊を引き起こす大惨事に近づいていると考えられることを示している。

政治指導者がむしろ問題を悪化

24日の会見で同誌は、人類が化学兵器やサイバー攻撃の脅威に晒された「新たな異常状態」に生きていると指摘した。また声明文では、現在の世界の政治指導者たちが、むしろ積極的に人類が直面する問題を悪化させているか、または問題解決のためにほとんど何もしていないと糾弾した。

2017年、核兵器の脅威の高まりや気候変動問題の軽視などの世界的傾向を重く見て、終末時計の針は30秒進められた。しかしその後も、世界の政治指導者によってこうした問題が改善されることはなかった。

また専門家会議のメンバーで、シカゴ・イリノイ医療研究特区のスーゼット・マッキニーは、「自分の専門分野から見ると、2018年で最大の脅威は、生化学上の脅威への対策がほとんど為されなかったことにある」とビデメッセージでコメントを寄せた。

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中