最新記事

中国経済

習主席は景気優先? 環境優先? 中国地方政府が板挟み

2018年12月17日(月)08時47分

苦しい目標達成

中国は昨年、北部の28都市に対して冬季中に微粒子物質「PM2.5」を少なくとも15%減らすために工業生産や石炭消費などを抑制するよう命じた。

天豊証券のエコノミストチームは、多数の工場閉鎖などを含むこうした取り組みによる雇用喪失が、北京─天津─湖北省地域だけで4万人になると推計している。

今年PM2.5対策を課せられたのは最大79都市と増えた半面、削減目標は大多数が約3%とずっと低くなった。

ただロイターが公式統計を分析したところ、今年11月の79都市のPM2.5の平均濃度は69.8マイクログラムと、前年同期を14%上回った。前年から改善したのは32都市にとどまっている。

中国で最も大気汚染がひどい湖北省では、混乱をできるだけ和らげる目的で、政府が企業を環境基準の取り組みの成績順に4段階に分け、汚染物質の排出が最も多い最下位のみに工場閉鎖などの厳しい措置を適用している。

唐山市にある製鉄所の幹部は「私の理解では、大気の質が目標水準を達成している限り、当局は目こぼししてくれる。生産削減は手段であって最終的な目的ではない」と語った。

それでも昨年目標を達成できなかった地域は、より大幅な生産削減を迫られるだろう。

例えば晋城市は、第1・四半期に経済が落ち込んだものの、汚染物質の排出が増えているため、引き続き少なくとも市内の半数の工場閉鎖を計画中だ。

また悪天候によって目標を達成できなくなる都市も出てくるだろう。国有の環境系シンクタンクの幹部は、江蘇省は天候不順で今年のスモッグの量が5─10%増えてもおかしくないと予想している。

中央政府による公害対策指令は昨年、一律的に適用され、企業は汚染物質を排出していてもいなくても生産削減を迫られたため、多くの地域で工業活動に支障をきたした。

その反省を踏まえ、李干傑・環境保護相は状況に応じたよりきめ細かな対応を約束。今年は自治体は独自の目標設定が認められ、環境基準違反企業の生産をただ減らす代わりに、基準達成を支援することも促されている。

もっとも多くの地方経済はなお石炭や鉄鋼といった産業に依存しており、新たな法令制定や基準引き上げ、課税などを通じて企業によりクリーンな生産態勢を確立させるという政府の方針は機能していない。

イクレイのZhu氏は「このジレンマを根本的に解決する方法は、産業構造の修正だ。遅かれ早かれ、これは中国が直面し、対処しなければならない問題と言える」と述べた。

(Muyu Xu、David Stanway記者)

[北京/上海 14日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界秩序は変化「断絶ではない」、ECB総裁が加首相

ビジネス

シティ、3月も人員削減へ 1月の1000人削減後=

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、1月速報値51.5で横ばい 価

ビジネス

グリーン英中銀委員、インフレ圧力や賃金上昇指標を依
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 8
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 10
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中