最新記事

中国経済

縮みゆく中国の民間経済 習近平の国有企業重視に経済悪化が追い打ち

2018年11月12日(月)10時15分

11月6日、かつて活気に満ちていた中国の民間セクターは、今年入って急激に進んだ経済悪化の直撃を受けており、起業家の中から政策の効果ばかりか政府の真意を疑う声まで上がっている。河北省で2017年撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)

かつて活気に満ちていた中国の民間セクターは、今年入って急激に進んだ経済悪化の直撃を受けており、起業家の中から政策の効果ばかりか政府の真意を疑う声まで上がっている。

起業再興を促した中国の改革・開放政策は40周年を迎えたが、民間企業の間では政府は国有企業重視の姿勢を強めているのではないかと不安が広がっている。

習近平国家主席は先週放映された起業家との会談で民間企業への支持を表明し、公平な経営環境や減税を約束。民間セクターへの金融支援も改めて確認した。

しかし習氏は同時に国有セクター擁護の姿勢も示し、国有企業の改革を進めて監視を強化することは、全国民のものである国有資産の保護に役立つと述べた。

江蘇省の防護手袋メーカーの幹部は「長い目で見るとプレッシャーはかなり大きくなるだろう。大企業の優位がどんどん強まる一方、中小企業は食い物にされるか破綻するか、そのいずれかでしかないのは明らかだからだ」と話した。

成長鈍化を受けて政府がリスクの高い借り入れの引き締めを強化したため、民間セクターは資金調達が苦しくなり、経営が悪化するところも出ている。国営メディアによると、今年に入って国有企業に株式を売却した上場民間企業は少なくとも40社に上る。

民間セクターは環境保護当局が公害対策と称して中小企業を閉鎖しているほか、多くの輸出業者は米中通商紛争の影響を受けやすく、大手国有企業に競争で負けているという。

先行きが不透明なため、民間セクターでは事業の拡大ではなく現状維持を選ぶ企業もある。

江蘇省常州の産業用装置メーカーの幹部は「民間企業は事業の拡大・増強など考えず、ほどほどで行くべきだ。事業を広げれば、国家や社会、政府との関係を考慮せざるを得なくなってしまう」と話した。

中国が経済開放を進めるなか、民間セクターはこの30年間おおむね繁栄の道を歩んできたが、先の世界金融危機を受けて政府が大規模な景気てこ入れ策を進めたおかげで大手国有企業が返り咲いた。

劉鶴副首相は先月、民間企業を犠牲にして大手国有企業を優遇しているとの見方は「偏っており、誤っている」と述べた。その上で、国有銀行や国有企業は資金繰り悪化に直面している民間企業を支援し、事業改革も担っていると主張した。

安定を重視する政府は民間企業の間で不満が広がるのを望んでいない。労働争議が激しくなったり労働組合組織化の動きが強まる恐れがあるからだ。習氏も先週、「民間経済はより大きな舞台に向かうべきだ」と述べている。

政府はこの数カ月で調達コストの引き下げや減税、インフラプロジェクトの拡大など対策を講じている。しかしこうした控え目な政策が効果を発揮するには時間が掛かるとアナリストはみている。

政府顧問の立場にある人物は、政府の政策が短期間に一定の効果を上げたとしつつも、「これでは不十分だ。長期的には根本的な考え方や改革に目を向け、大手国有企業と民間企業の関係にどう対処するか考える必要がある」と述べた。

Kevin Yao

[北京 6日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがイランを水面下で支援 衛星画像提供やサイバ

ワールド

国連事務総長特使がイラン訪問へ、和平促す取り組みの

ビジネス

米国株式市場=まちまち、ホルムズ海峡期限控え交渉動

ワールド

USMCA再交渉、7月1日の期限後も継続の可能性=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 5
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 8
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中