最新記事

日本社会

加速する東京一極集中、就職世代の人口流入が止まらない

2018年11月7日(水)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

東京への一極集中傾向は一層強くなっている ooyoo/iStock.

<職を求めて東京に移動する若年世代の数は、90年代半ば以降、増加傾向が続いている>

ほとんどの先進国で転居の自由が認められている現在、就業の機会や文化が集積した都市部への人口移動は世界的な潮流となっている。

首都の東京都への転入超過数(転入者から転出者を引いた数)をみると、1950年代後半から60年代前半にかけては、大幅なプラスになっている。高度経済成長の時代で、地方から若年労働力が大量に流入したためだ(集団就職)。しかし60年代後半になり、公害の発生など成長に陰りが見え始めると、値はマイナスに転じる。住みにくい都市から郊外に人が動いたことによる。

90年代半ばまでこの状態が続くが、それ以降、東京の転入超過数は再びプラスに転じ現在に至る。ここ数年は増加傾向で、2017年ではプラス7万5498人だ。これをもって、東京志向は強まっていると言われる。

どういう目的で流入が増えているかは、転入超過数を年齢別にみると分かる。<図1>は、2010年と2017年の転入超過数の年齢カーブを描いたグラフだ。

maita181107-chart01.jpg

両年とも、18歳と22歳に山がある「ふたこぶ」になっている。大学進学と就職に伴う流入が大半であることが分かり、最近では後者がかなり増えている。22歳の転入超過数は2010年では1万2800人だったが、2017年では2万942人と1.6倍に増加した。

東京での就職を望む若者の流入が増えていること(転入の増加)、大学進学等で上京した地方出身者が郷里に戻らなくなっていること(転出の減少)という2つの要因が考えられる。後者は、わが子のUターンを望む地方の親にとっては頭の痛い事態だ。

都会に出た若者がどれほどUターンするかは、地方にとって重要な関心事だ。それがわかる統計はないが、高卒時の大移動が起きる前の人口と、大卒後少し経ってからの人口を照らし合わせることで、おおよその見当をつけることはできる。

筆者の一つ上の1975年生まれ世代は、1990年に15歳、2000年に25歳になる。筆者の郷里の鹿児島県の数値を拾うと、前者は2万7603人、後者は2万146人だ。15歳から25歳にかけて、同世代の人口が3割弱減っている。都会に出たまま帰ってこない流出層の影響は大きい。対して東京都は、14万8110人から20万7856人に膨れ上がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

見通し実現なら経済・物価の改善に応じ利上げと日銀総

ワールド

ハリス氏が退任後初の大規模演説、「人為的な経済危機

ビジネス

日経平均は6日続伸、日銀決定会合後の円安を好感

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    フラワームーン、みずがめ座η流星群、数々の惑星...2…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中