最新記事

日本社会

加速する東京一極集中、就職世代の人口流入が止まらない

2018年11月7日(水)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

同一世代の人口変化を追跡することで、「膨らむ都市」と「萎む地方」が露わになるのだが、最近の世代ではその傾向が強まっている。今みた1975年生まれ世代と、2015年に25歳になる1990年生まれ世代を比較すると<表1>のようになる。

maita181107-chart02.jpg

1990年生まれ世代では、進学・就職というイベントを経ることで、東京都は人口が6割増え、鹿児島県は4割弱減少する。想像以上に凄まじい変化だ。

鹿児島県のように、青年期の流出で同世代の人口が縮小する県は多い。最近の世代では、その数が増えている。<図2>は、15歳から25歳にかけて同世代の人口が2割以上減る県に色を付けたマップだ。

maita181107-chart03.jpg

75年生まれでは14県だったが、90年生まれでは25の県に色が付いている。進学・就職に伴う流出が増えているのか、都会に出た若者のUターンが減っているのか、事情は定かでないが、縮小する県が増えているのは確かだ。

対策は、流出を抑えることとUターンを促すことに分かれる。前者は大学の地方分散・都市部での定員抑制、後者は地元に戻ってくることを条件とした奨学金の支給などが考えられる。地域に雇用の機会を創出することは、双方に共通する。

これらは若者を定住させる対策だが、現実として効果を上げるのはなかなか難しい。そこで、定住とはいかずとも地域と関係を持ち続ける「関係人口」を増やすことも求められる。関係人口とは、「移住した定住人口でもなく、観光に来た交流人口でもない、地域と多様に関わる者」を言う(総務省)。都会に住みながらも、専門知識やスキルを使って地域課題の解決に貢献する人などだ。

Uターンはできずとも、郷里とこのような形で関われる若者はいる。こういう人材を「関係人口」に育て上げるとよい。IT化が進んだ現在、地域振興の担い手となるのは、当該地域に定住している住民だけではない。

<資料:総務省『住民基本台帳人口移動報告』
    総務省『国勢調査』

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、ロシア凍結資産活用で合意 利子でウクライナ軍

ビジネス

政府関係者が話した事実はない=為替介入実施報道で神

ワールド

香港民主派デモ曲、裁判所が政府の全面禁止申請認める

ビジネス

英アーム、通期売上高見通しが予想下回る 株価急落
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中