最新記事

米中関係

米中冷戦、悪いのはアメリカだ

A Cold War Is Coming, and It Isn’t China’s Fault

2018年11月5日(月)19時30分
ザカリー・カラベル(米調査会社リバー・トワイス・リサーチ社社長)

これらに対し中国政府は報復関税で応じるとともに、脅しに屈して譲歩することはないと警告した。だが特筆すべきことに、もっと重大で戦略的な問題(たとえば南シナ海の領有権問題)については発言を控えた。アメリカの要求に応じるつもりはさらさらないにも関わらず、習近平(シー・チンピン)国家主席の厳しい統制の下、火に油を注がないよう中国政府が気を配ったのだ。

ここでアメリカが中国を完全に利害が相容れない敵として扱い、中国の長期的な野望は必ずアメリカの犠牲を伴うかのように言うのは大きな間違いだ。そんな言い方をすれば、中国の台頭とアメリカの凋落は表裏一体で、生き残れるのはどちらか一方であるかのような印象を与える。アメリカとの敵対関係を望んでいる様子などほとんど見せていない中国を、敵対の方向へと追い込んでしまいかねない。

中国が近年、覇権拡大に動いているのは事実だ。天然資源と新市場へのアクセス確保のために、アフリカやアジア、中南米に巨大投資を行っているのがいい例だ。中国軍も、南シナ海やその先の海域にまで進出して力を誇示している。

中国の台頭は世界にプラスだった

テクノロジー面では、中国の半ば閉ざされた経済システムは、アメリカをはじめとする外国の多くの企業の進出を阻んできた。特に通信やインターネットの分野ではそれが顕著だが、それはアメリカが自国の機密に関わる産業を守っているのと変わらない。

これまで長年、米企業は中国で事業を行う対価として、世界貿易機関(WTO)の精神やルールに違反するようなやり方で技術移転を求められてきた。東アジアに駐留する米軍や中国に進出した一部の米企業は明らかに中国政府に歓迎されていない。だがだからといって冷戦のような敵対姿勢をとることが優れた政策だということにはならない。

中国に対する長年の外交的な働きかけや投資にも関わらず、中国共産党はアメリカの思い通りにならなかった、だから中国への敵意は正当化されるという主張も最近よく聞かれるが、これは的外れだ。中国の経済的台頭は世界の安定に寄与してきた。ナイキからスターバックス、アップルに至るまで数多くの米大企業には新たな市場をもたらし、アメリカの消費者も中国からの安い輸入品という恩恵を手にした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、民主5州の育児・家族支援凍結 100

ワールド

マクロスコープ:中国の対日禁輸、政府内に動揺 「企

ワールド

豪CPI、11月は前月比横ばい コア高水準続き利上

ワールド

中国、台湾独立派3人に制裁 親族の入境も禁止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中