最新記事

イエメン内戦

昨日、サウジアラビアの戦争に殺されたイエメンの少女

Who Is Amal Hussain? Yemeni Girl Dies Amid Saudi War

2018年11月2日(金)17時15分
トム・オコーナ―

ジフテリアにかかったイエメンの子供たち(サヌア) Khaled Abdullah-REUTERS

<ニューヨーク・タイムズに写真が載ってわずか数日後の11月1日、いつも微笑んでいたアマルは栄養失調で天に召された>

国連が世界最悪の人道危機とみなしたイエメンで、また小さな犠牲者が出た。

2011年にこの世に生を受けたばかりの少女アマル・フセイン、7歳だ。彼女のやせ衰えた写真は、2018年10月26日付けのニューヨーク・タイムズ紙に掲載された。しかし、それから1週間も経たない11月1日、アマルは栄養失調で亡くなった。イエメン北部の難民キャンプで短い一生を終えたのだ。

アマルの写真を見たニューヨーク・タイムズ紙の読者からは、飢えに苦しむ彼女を助けたいというメッセージが多く届いていたが、遅すぎた。

アマル・フセイン 享年7(2011-2018)


アマルの母親マリアム・アリは同紙に対し、「心が張り裂けそうだ」と涙ながらに語った。「アマルはいつも微笑んでいた。いまはほかの子どもたちのことが心配だ」

イエメンの飢餓人口は既に800万人に達しているが、国連によればそれがさらに350万人増加するかもしれないという。

サウジアラビアが軍事介入するイエメン内戦のおかげで、国土が南北に分断され、食糧が届きにくい状態だ。コレラやジフテリアなどの病気も流行している。サウジアラビアは、空爆でも民間人や子供の犠牲者を多く出している。

トルコのイスタンブールにあるサウジアラビア総領事館で、反体制記者ジャマル・カショギが殺害されサウジの関与が濃厚になっていくると、多くのヨーロッパ諸国はサウジアラビアに対する軍事支援の打ち切りを決めた。

だが、サウジアラビアへの武器輸出がもっとも多く、イランという共通の敵をもつアメリカは対応を渋っている。ドナルド・トランプ米大統領は、カショギ殺害にかかわったとされるサウジアラビア人のビザを取り消す以外、何の措置もとっていない。

マイク・ポンペオ米国務長官は10月30日、戦闘の早期終結を求めた。とりわけサウジアラビア率いるアラブ連合には、人口密集地に対する空爆を停止するよう求めた。

カショギ殺害で「残虐な体制」というイメージがつき、名誉挽回をしたいサウジアラビアは、果たして停戦に応じるか。それともますます血も涙もない暴力を続けるのか。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、156円台前半 FRB政策

ワールド

米下院特別委、中国軍の台湾周辺演習を非難 「意図的

ワールド

仏独英、中国の台湾周辺軍事演習に懸念表明 一方的な

ワールド

サウジ、イエメン南部の港を空爆 UAE部隊撤収を表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中