最新記事

寄生虫

ナメクジを食べた男性、脳を侵す寄生虫で8年後に死亡

Man Who Ate Garden Slug Dies From Rat Lungworm

2018年11月6日(火)14時15分
ハナ・オズボーン

ナメクジは食べないで Peter Nicholls-REUTERS

<友だちとパーティー中にふざけてナメクジを食べたせいで、広東住血線虫症にかかり重い障害を負ったラガーマンは、家族と友人に囲まれて短い一生を終えた>

オーストラリア在住の27歳の男性が、広東住血線虫症に起因するさまざまな合併症を患った末に11月2日、死亡した。原因はなんと8年前に庭にいたナメクジを食べたことだという。

将来を嘱望されるラグビー選手だったサム・バラードは19歳だった2010年、友人たちと自宅の庭でワインを飲んでいた。「ちょっと大人ぶるためのワインだった。その時、ナメクジが這い出てきたんだ」と、友人のジミー・ギャルビンは地元メディアに語った。「『食べてみせようか?』と言うと、代わりにサムが食べた」

それから数日、バラードは足に痛みを覚えるようになった。ナメクジが原因かもしれないと心配になって病院に行くと、広東住血線虫症だと診断された。脳や脊髄に影響を及ぼす病気だ。

広東住血線虫症は線虫が寄生することで引き起こされる病気で、その成虫は通常ネズミなどのげっ歯動物のみから検出される。だがこの寄生虫に感染したネズミの排泄物の中に幼虫がいる場合があり、ネズミの排泄物を食べたナメクジやカタツムリが感染することがある。

サム・バラードの人生はナメクジを食べたことで一変してしまったが、病に倒れてからもいつも友人たちに囲まれていた


昏睡状態が一年以上続いた

米疾病対策センター(CDC)によれば、広東住血線虫症は多くの場合、時間の経過と共に自然に治癒する。だが一部のケースでは、脳の損傷や死につながるような重篤な合併症を引き起こすことがある。

バラードの場合は、広東住血線虫が原因で好酸球性髄膜脳炎(髄膜炎の一種)を発症。一年以上にわたって昏睡状態が続き、その後、意識を取り戻したものの脳に損傷を受けていた。

それから数年間、バラードの友人や家族は理学療法によって彼の回復を助けしようとしたが、24時間の介護を要する重い後遺症が残った。2017年10月には、バラードが障害者保険から受給していた給付金が削減されたと家族が明らかにしたことで、バラードの病状に注目が集まった。家族による働きかけの後、政府はこの決定を撤回した。

11月4日、オーストラリアのテレビ番組「ザ・サンデー・プロジェクト」がバラードの死を報じた。アンカーのリサ・ウィルキンソンは「悲しいお知らせがあります」と切り出した。「番組では2018年に入ってから、サム・バラードさんについてお伝えしました。友人たちにけしかけられてナメクジを食べ、広東住血線虫症にかかってしまった男性です」

「それ以降、友人たちはずっとバラードさんを支えてきましたが、11月2日、彼は家族と友人たちに囲まれて息を引き取りました。お母さんへの最後の言葉は『愛している』だったそうです」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、香港の火災報道巡り外国メディア呼び出し 「虚

ワールド

26年ブラジル大統領選、ボルソナロ氏長男が「出馬へ

ワールド

中国軍機、空自戦闘機にレーダー照射 太平洋上で空母

ビジネス

アングル:AI導入でも揺らがぬ仕事を、学位より配管
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中