最新記事

雇用

モディ首相の労働改革進まず インド南部でスト頻発、ヤマハ工場も数百人が座り込み

2018年10月22日(月)15時25分

10月15日、バイクの製造拠点であるインドの2都市で労働紛争が増え、モディ政権が約束する雇用創出の難しさを浮き彫りにしている。写真は、南部タミル・ナードゥ州にあるヤマハ発動機の施設で開かれた賃上げなどを要求する集会。9月撮影(2018年 ロイター/Sudarshan Varadhan)

バイクの製造拠点であるインドの2都市で労働紛争が増え、モディ政権が約束する雇用創出の難しさを浮き彫りにしている。

ストによって打撃を受けているのはヤマハ発動機やインドのエイシャー・モーターズで、主要自動車メーカーは概ね無傷だ。

労働者は主に賃上げと雇用の安定を求めている。後者の観点では、正規雇用に比べ低賃金で解雇しやすい契約労働者の利用削減が主な要求だ。

来年5月までに総選挙を控えるモディ首相は製造業のテコ入れによる雇用創出を約束。しかし景気全般の拡大にもかかわらず、賃金の上昇が遅れるなど期待に答えられていない。

「アジアのデトロイト」と呼ばれるインド南部の都市チェンナイ近郊ではここ数カ月、バイクメーカーでストが相次いでいる。

契約労働者は正式な与信市場にアクセスできないため購買能力が制限され、正規労働者のように中間層に食い込む道を断たれている。

一方、燃料価格や金利の上昇を背景に自動車の販売は低迷しており、企業側はストにより収益率がさらに圧迫されかねない状況だ。

債務のわな

チェンナイ郊外の工業地帯を最近訪れたロイター記者は、ヤマハの制服を着た労働者数百人が工場の入り口近くに座り込む光景を目にした。

英語、日本語、タミル語で「あなた方は優しさを知っているのか」、「圧制に終止符を」などと書かれたプラカードを掲げている。

彼らが要求するのは賃上げや正規雇用に加え、団結権、団体交渉権だ。

約3週間前からストを続けるヤマハの従業員の月給は最大1万7000ルピー(229ドル)。上昇する生計費に見合うには大幅な賃上げが必要だと訴える。

その近くにあるエイシャー・モーターズのバイク工場のフルタイム労働者の月給は平均約2万5000ルピー。労働者は給与の少なくとも倍増を要求し、この3週間はほぼストに入っている。

30歳の従業員は「賃金が安いから債務のわなにはまっている。ローンなしの生活は考えられない。貯蓄はゼロだ」と語る。

ヤマハはコメントを控えたが、マドラス高等裁判所への宣誓供述書で「合法的な労働組合活動には反対していない」としている。

エイシャー・モーターズは「すべての従業員は公平に扱われている」との声明を出した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:税収増も給付財源得られず、頼みは「土台増」 

ワールド

米、対外援助組織の事業を正式停止

ビジネス

印自動車大手3社、6月販売台数は軒並み減少 都市部

ワールド

米DOGE、SEC政策に介入の動き 規則緩和へ圧力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 9
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中