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日中関係

日本は中国との闘い方を知らない

2018年10月16日(火)13時10分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

アメリカを中心として運営されている国際宇宙ステーションは2024年に使用期限を迎えるので、その前に中国独自の宇宙ステーション「天宮」を打ち上げて、天宮をポスト国際宇宙ステーションにさせようと、宇宙開発に全力を投入している。「中国が宇宙の主人公」になって国連加盟国にも天宮の利用を提供するという戦略だ。

一方、「一帯一路」沿線国の中の開発途上国のために、中国が代わって、その国の人工衛星打ち上げてあげ、その後のメイテナンスも見てあげるという協定にも既に著名済みだ。中国はこうして宇宙を実行支配するつもりなのである。天宮1号から3号までは試験衛星だが、有人飛行も既に実験済みだし、宇宙ステーションとなる「天宮」は2020年に打ち上げられ、2022年には有人宇宙ステーションとして正常に機能し始める。

半導体は軍事や宇宙にも汎用性を持っている。2018年データでは、その半導体ファブレス企業のトップ10に中国が2社も入っている。

もし「中国製造2025」が完遂されれば、アメリカが世界ナンバー・ワンから転落する危険性を孕んでいる。

だからトランプ大統領はそれを阻止しようと、半導体の中国への輸出に制限を設け、ハイテク製品にも高関税をかけて猛然と中国と戦っているのである。

ハイレベルの半導体がアメリカから入って来なくなれば、当面、中国は非常に困る。中国が輸出するハイテク製品の90%は輸入に頼っていたからだ。

だから習近平は何としても日本に微笑みかけて、日本からハイレベルの半導体を輸入したいのである。世界のハイテク製品のほとんどが中国製であるこんにち、トランプに半導体の取引を制限(一部の中国企業には禁止)されたのでは、中国はお手上げだからだ。

日本が取るべき態度

こんな絶好のチャンスに日本が取るべき態度は、「日本と仲良くしたいのなら、尖閣問題や東シナ海問題で譲歩しろ」という要求を中国に突き付けることである。

そうすれば、習近平がどれだけ困るか、分からないのだろうか。

だというのに、こちら(日本)から腰を低くして「どうかシャトル外交をしてほしい」と習近平に頼みに行くとは、なんとも情けない。 

あまりに中国との喧嘩の仕方を知らな過ぎる。

今ほど絶好のチャンスはなかったのに、少ないチャンスを失ってしまった。

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