最新記事

エアライン大革命

都会の空を「空飛ぶタクシー」が行き交う日は近い

UBERING AHEAD

2018年10月9日(火)17時10分
クライブ・アービング(航空ジャーナリスト)

ウーバーが計画している空飛ぶタクシーの乗降に使う「スカイポート」のイメージ案 UBER/PICKARD CHILTON AND ARUP

<ウーバーが空中送迎サービスの試験運用を20年に始めると発表――空飛ぶタクシーはもう夢じゃない>

15年7月10日、流線形の小さな飛行機がフランスから英仏海峡を越え、イギリスに飛んだ。見た目は普通のジェット機だが、搭載した2基のエンジンはほとんど騒音を出さない。

この飛行は106年前のもの――1909年7月のルイ・ブレリオによる初の英仏海峡横断飛行――と同じくらい重要になる可能性がある。小型飛行機はE-Fanと呼ばれるエアバスの試作機。エンジンの動力は全てバッテリーから供給されていた。

航空業界は今、ジェットエンジンから電動エンジンに主役が変わる新時代の到来を迎えている。国際線などの主要な航空路線はともかく、都市交通や都市間輸送は劇的に変わりそうだ。

大都市の大通りは交通渋滞が恒常化しているが、そのすぐ上の空間は大抵すいている。ここに自動車とほぼ同サイズの乗り物を飛ばしたら?

そんなアイデアを提唱しているのが、配車サービスの分野で既成概念を打破したウーバー・テクノロジーズだ。都市部の地面から1000~2000フィート(305~610メートル)の空間は、いずれ数百万人に利用されるスペースになると、同社は考えている。

ウーバーは今年5月、「空飛ぶタクシー」による空中送迎サービスの計画を世界に向けて発表した。試験飛行は既に始まっており、この夢のカギを握るのが電動航空機だ。例えばドイツの新興企業リリウムは、スカイプの共同創業者ニクラス・センストロムなどの民間ベンチャーグループから、1億ドル以上の資金を調達している。

リリウムの試作機を含め、開発中の電動航空機はeVTOL(電動垂直離着陸)と呼ばれる技術を使用している。

ヘリコプターのように垂直離陸が可能で、その後は従来の小型飛行機のように高速で水平飛行する。

試験飛行中のリリウムの試作機は無人だが、完成形の航空機にはパイロットが搭乗する。最終的にはタクシーと同じくらいの運賃で「誰でもどこでもいつでも」利用可能になるという。例えば、4人の乗客をロンドンからパリまで1時間で運べるそうだ。

ウーバーは25年までに、世界でeVTOL機のネットワークを構築することを目指す。最初の試験サービスは、テキサス州ダラス・フォートワースとロサンゼルスで20年に実施予定。専用の発着場「スカイポート」を各地に設置し、乗客の乗り降りに使うという。

根本的な課題は、ジェットエンジンと同等のパワーを常時要求される厳しい使用条件に耐えられる、高出力でしかも軽量の航空機用バッテリーを開発することだ。具体的には、1回の充電で最大移動距離約40キロのフライトを10回まで可能で、しかも10分未満で再充電できる性能が求められる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界的「異例」事態、ECBは慎重姿勢維持を=アイル

ビジネス

中国人民銀、中期貸出制度を修正 政策金利の役割さら

ワールド

米ロ、黒海穀物協定再開について協議へ=ロシア報道官

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、3月は7か月ぶり高水準 製造業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    トランプ版「赤狩り」が始まった――リベラル思想の温…
  • 10
    インド株から中国株へ、「外国人投資家」の急速なシ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中