最新記事

米最高裁

最高裁判事候補カバノーを擁護した共和党を女性有権者は許さない

GOP Support for Kavanaugh Alienates Women Voters

2018年10月1日(月)18時00分
ジェイソン・レモン

カバノーは9月27日に公聴会で疑惑について証言した際、怒りをあらわにしたAndrew Harnik-Pool/Getty Images

<性的暴行を告発した女性の証言と、性的暴行の容疑者である最高裁判事候補が議会証言を行った後、アメリカはますます熱く、分断している>

米共和党幹部の多くは、性的暴行疑惑が次々に浮上している米連邦最高裁判所判事候補ブレット・カバノーを擁護し、指名承認する構えを崩していない。こうした態度は、11月の中間選挙で有権者、特に女性有権者から猛反発を受けるだろう、とアナリストたちは警告する。

「ここまで感情的な問題になっているのに、共和党議員はほとんどが、カバノーの指名を承認すると公に繰り返してきた。もう後戻りはできない」と、米シラキュース大学マックスウェル行政大学院のグラント・リーハー教授(政治学)は米政治専門誌、ザ・ヒルに語った。

手の平に「私は(性的暴行の)生き残りを信じる」というスローガンを書いてカバノーの指名承認に抗議する女性たち


カバノーの性的暴行を受けたと告発したカリフォルニア州の大学教授、クリスティーン・ブレイジー・フォードとカバノー本人が上院司法委員会の公聴会で証言した9月27日の翌日、2人の証言がまったく食い違ったにも関わらず、委員会は性急に採決をとり指名を承認した。

だが、共和党委員の1人が立ち上がり、本会議での採決前にFBIが調査を行うべきだと要求。カバノーを最高裁判事に指名したドナルド・トランプ大統領も譲歩してFBIに捜査を命じ、共和党も、承認採決を1週間延期することで合意した。だがそれで有権者の怒りが収まるとは思えない、とリーハーは言う。

「女性たちは昨日の公聴会での出来事を忘れない。明日になっても、11月になっても忘れない」と、リベラル派の米市民団体「ムーブオン(MoveOn)」のシニアアドバイザー兼広報担当のカリーン・ジョン・ピエールは9月28日、「ザ・ヒル」に語った。

カバノーが最高裁判事になることに抗議し、最高裁に向かう女性たち


女性と若者の共和党離れ

28日の朝、カバノーの指名に反対するデモ参加者が上院議員会館の廊下に集まり、「11月はもうすぐだ!」などと叫んだ。フォードがカバノーにどのように襲われたか、公聴会で証言したにもかかわらず、共和党委員が多数派を占める上院司法委員会が指名承認に踏み切ったからだ。

「中間選挙に向け、民主党支持者の熱狂と意欲は、桁外れに高まっていくだろう」と、中立派の政治アナリストであるストゥ・ローテンブルグは米ニュースサイト「Mic」に語った。「特に熱いのは、浮動票を握る郊外の女性や、18~29歳の若者の有権者。彼らは大統領のことが嫌いでも、以前なら選挙に行かなかった層だ」

米NBCニュースによれば、マイケル・スティール前共和党全国委員長は、「この問題をめぐって共和党は混乱状態に陥った」と語った。

「重要なのは、上院司法委員会や本会議での承認採決や、カバノーが最高裁判事に任命されるどうかだけではない。共和党議員がこの問題にいかに対処し、フォードをどのように扱ったかも、同じくらい重要だ」と、民主党候補の当選を支援する団体「プライオリティーズUSA」の責任者、ガイ・セシルはNBCニュースに語った。

今のところ、どの点をとってもいただけない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、11月CPIが予想下回る 

ビジネス

トランプ氏、FRB議長候補のウォラー理事と面会 最

ワールド

トランプ氏、大麻規制緩和の大統領令に署名 分類見直

ワールド

米政権、ICC判事2人に制裁 イスラエルへの捜査巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 9
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中