最新記事

銃規制

銃所有率全米トップのテキサスに変化 規制強化の民主候補を支持する共和党員も

2018年9月26日(水)14時29分

共和党のクルーズ候補と、民主党のオルーク候補の選挙バナー。テキサス州カリーゾ・スプリングスで5日撮影(2018年 ロイター/Callaghan O'Hare)

テキサス州で肉用牛農場を営むビル・マーチンさん(72)は、共和党員一筋。銃は20丁以上所有しており、6歳から射撃に親しんできた。

そして今、マーチンさんはかつてなら考えられなかったことを検討している。銃規制の強化を訴える民主党の連邦上院議員候補に票を投じることを考えているのだ。

マーチンさんの心変わりの理由は単純だ。米国やテキサスをむしばむ銃暴力に辟易(へきえき)しているのだ。銃を愛する文化で知られるテキサス州では昨年、教会で銃の乱射事件が起き、26人が死亡している。

「私は非常に保守的だが、それでも銃についてはもっと中立的な対応が必要だと思う」と、マーチン氏はカリーゾ・スプリングス近くの自宅農場でロイターに話した。

銃を愛する一方で規制強化を望むという、マーチンさんのような複雑な考え方こそ、民主党のベト・オルーク上院議員候補がテキサスで広めたいと考えているものだ。

エルパソ地区選出の連邦下院議員のオルーク氏は、11月の中間選挙で、州選出の連邦上院議員の座を目指して共和党現職のテッド・クルーズ氏に挑む。オルーク氏は、銃規制強化を自身の公約の柱に掲げ、銃購入希望者の身元調査の義務化や、攻撃用銃器の販売禁止を訴えている。

過去の選挙では、銃所有率が全米で最も高いテキサス州で、銃規制改革を訴える民主党候補は、確実に政治的「自殺」に終わっていた。だが今回、オルーク氏はクルーズ氏を追い上げている。

ロイター/イプソス/バージニア大学が19日に発表した世論調査では、オルーク氏の支持率はクルーズ氏に並んだ。最近の他の世論調査では、クルーズ氏がわずかにリードしている。18日に公表されたキニピアック大の調査では、オルーク氏が9ポイントの差をつけられた。

両党にとって、テキサス州の選挙は重要だ。

11月6日に投開票が行われる中間選挙で、民主党が上院の過半数を獲得するには、改選前より2議席増やさなければならない。共和党は、1994年以来上院に民主党候補を選出したことがないテキサスのような「安全」州を死守したい。

オルーク氏の善戦により、テキサスのような共和党支持の赤い州で銃規制の問題を持ち出すのは危険だという長年の「常識」が揺らいでいる。

今年は、民主党の下院議員候補7人が銃規制を訴えており、その全員が、民主党下院議員時代にアリゾナ州で銃撃を受け一時重体となったガブリエル・ギフォード氏が設立した銃規制グループの支持を受けている。同グループは、2016年の選挙ではテキサス州で支持した立候補者はいなかった。

銃規制の問題は「白か黒かの問題ではない」と、バージニア大政治センターで上院選挙戦を分析しているジェフリー・スケリー氏は指摘。「オルーク氏にとって、それは有利に働く。もし白か黒かの問題だったら、テキサスのような州で彼はもっと苦労していただろう」

上院議員2期目を目指すクルーズ氏は、伝統的な選挙戦術を守り、銃規制を主張する挑戦者を攻撃している。

ヒューストン近郊で最近行われた選挙集会で、クルーズ氏は、オルーク氏の銃規制の主張は「ほとんどのテキサス人の価値観から完全に外れている」と切り捨て、「米国で最も人気がある火器の一部禁止を訴えている」と攻撃した。

オルーク氏陣営は、ロイターのインタビュー要請に応じなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中