最新記事

イラン核合意

トランプ政権の圧力に屈し、独フォルクスワーゲンもイランから撤退

Volkswagen Caves to Trump Pressure to Pull Out of Iran

2018年9月21日(金)15時10分
ジェイソン・レモン

トランプはどこまでイランと欧州企業虐めを続けるのか Fabrizio Bensch-REUTERS

<イラン憎しで、イランと事業を続けるヨーロッパ企業に対する撤退圧力を強めるトランプ政権。アメリカの離脱後も必死で核合意とイランとの友好関係を守ろうとする欧州政府の努力が水の泡になりかねない>

アメリカのトランプ政権から圧力を受けて、フォルクスワーゲンがイランでの事業から事実上、撤退することを決めた。EUは、イランは核合意を遵守しているとしてイランを支持しているが、ヨーロッパの主要企業は次々にイランから撤退している。トランプ政権が、イランと取引する企業はアメリカ市場から締め出す、と脅しているからだ。

駐独米大使リチャード・グレネルがブルームバーグに明かしたところによると、トランプ政権との交渉の結果、フォルクスワーゲンは9月18日、イランとの事業を停止すると決めた。

同社の広報担当者は、この重要な決定を通常の経営判断の範囲内だと言う。彼はAFP通信に、同社はいつも「国内法や国際法、いかなる輸出規制も」遵守するよう努めてきた、と話している。「アメリカの対イラン制裁が本格再開すれば、イランから輸出ができなくなる可能性も考慮した」

フォルクスワーゲンの決断についてグレネルは、トランプ政権は「この決定を喜んでいる」と言う。「イランは経済資源を国民のために使うのではなく、世界中で暴力と動揺を拡散することに振り向けているのだから」

敵視しているのはアメリカだけ

イランにおけるフォルクスワーゲンの存在は比較的小さいが、その撤退はイランと核合意にとって新たな痛手となる。ドナルド・トランプ米大統領は、今年5月に一方的に合意から離脱、8月には対イラン経済制裁の一部を復活させた。核合意の他の締結国(フランス、イギリス、ドイツ、EU、ロシア、中国)はいずれも、トランプ政権の離脱を批判し、合意を継続している。

EU、ドイツ、フランス、イギリスの外相は8月に出した共同声明で、各国がイランと結んでいるビジネス、経済上の権益をほごする守る意図を明らかにした。

しかし、フランスの石油メジャー「トタル」やドイツのスポーツメーカー「アディダス」、ドイツの化学メーカーBASF、ドイツの自動車メーカー「ダイムラー」といった欧州のトップ民間企業の多くは、イラン国内での事業を縮小している。

トランプが、イランと取引を続ける企業に対する報復をちらつかせるからだ。「イランとビジネスする者は誰であろうと、アメリカとはビジネスできない」ともツイートしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米データブリックス、資金調達後に評価額が1000億

ワールド

米国家情報長官、情報機関の現旧職員37人の機密取扱

ビジネス

FRB議長が住宅業界に「深刻な打撃」とトランプ氏、

ビジネス

米株価、ジャクソンホール会合時期は毎年堅調傾向 例
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中