最新記事

中国

沈みゆく船を見切ったアリババ会長ジャック・マーが電撃退任

2018年9月21日(金)15時40分
ミンシン・ペイ(クレアモント・マッケンナ大学教授、本誌コラムニスト)

来年9月の会長退任後は教育を中心とした慈善活動に力を注ぐとマーは語る BRENDAN MCDERMID-REUTER

<ネット通販市場の限界、政府規制と貿易戦争......中国IT の風雲児ジャック・マーが感じた「潮時」>

馬雲(ジャック・マー)といえば中国ビジネス界の超大物。英語教師を務めていたが、ネット通販最大手アリババ・ドットコムのカリスマ創業者となり、アマゾン・ドットコムの創業者ジェフ・ベゾスの中国版とも呼ぶべき存在に上り詰めた。

そんな中国の起業家精神を象徴するマーが、来年9月にアリババの会長を退任すると表明した。このニュースは投資家を驚かせただけではない。中国に築いた輝かしい地位を投げ出す理由は何なのかと、さまざまな臆測を呼んでいる。

マーが語った退任の理由を軽く考えるべきではないだろう。推定380億ドル以上の資産を持つ54歳の大富豪は、退任後は慈善活動、特に教育事業に時間と精力を注ぐという。中国の教育環境を向上させるのは結構だが、この言葉を額面どおりに受け取るわけにはいかない。優れたビジネスマンが想定外の行動を取るとき、凡人には分からない何かを見据えていることがある。

例えば、香港の著名な実業家である李嘉誠(90)がそうだった。彼が13年に中国から資産を引き揚げたとき、表向きには売却が必要という説明だった。だが今にして思えば、中国経済が浮き沈みの激しい段階に入ると見越して早めに撤退を図ったのだ。その後の展開は、李の判断が正しかったことを示している。

マーがアリババを離れる理由は自分の評判を守ることかもしれない。会社が順調なうちに側近も社員も残して去れば、サクセスストーリーに傷が付かない。

実際、中国のIT業界が逆風にさらされていることは、マーのような天才でなくても分かる。

もうIT業界では、バラ色の成長は望めない。ネット通販はほぼ飽和状態。アリババだけでなく騰訊控股(テンセント・ホールディングス)や百度(バイドゥ)も、成長を続けたければ他業種に進出するしかない。

IT大手に政府が介入?

だが、中国には厳しい規制の壁がある。金融や医療、通信などは国有企業による独占状態だ。製造業ならまだ参入は可能だろうが、アリババのような企業は全く新しい対応が必要になる。

しかも中国政府は、テンセントやアリババといった大企業を警戒するようになった。国はこれらの企業にマイノリティー出資(過半数を超えない株式の取得)をすることで、国内の証券取引所に上場させて規制の網を掛けようとしているとも言われている(これまで中国のIT大手は外国で上場してきた)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:トランプ政権、気候変動の「人為的要因」削除 

ビジネス

アングル:機内WiFiは必需品か、マスク氏とライア

ワールド

〔情報BOX〕-次期FRB議長指名のウォーシュ氏、

ビジネス

次期FRB議長にウォーシュ氏指名、トランプ氏「利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中