最新記事

一帯一路

中国マネーはアフリカをむしばむ麻薬なのか

Chinese Aid and Investment Are Good for Africa

2018年9月18日(火)16時20分
J・ピーター・ファム (大西洋協議会アフリカセンター所長) アブドゥル・サラム・ベロ (同アフリカセンター客員フェロー) ブバカールシド・バリー (世界銀行アフリカグループⅡ理事長)

民主主義が十分に確立されていないアフリカの国は、欧米諸国の条件付きの援助を敬遠し、中国の投資に頼るかもしれない。その場合、その国の長期的な経済の健全性は危うくなる。

それゆえ中国マネーがアフリカを救うとみるのは短絡的にすぎるが、欧米諸国はパイを奪い合う競争相手として中国を警戒すべきではない。中国の投資でアフリカ経済が活性化されれば、世界経済全体にプラスになる。

アフリカの社会基盤、特に電力と交通インフラ整備の立ち遅れは目を覆うばかりだ。改善には今後10年にわたり年間900億ドルの投資が必要だと言われている。そんなカネを出せるのは中国くらいのものだ。しかも中国は自国経済の成長を維持するために、アフリカの資源と市場を必要としている。

支援する側・される側双方が利益を得るには、インフラをただ造るだけではダメだ。手抜き工事をせず、環境・労働基準を満たし、利用価値の高い施設を建設して、まともに運営する必要がある。

やる気があれば、それは可能だが、そのためにはアフリカ諸国の指導者が交渉の場で正当な要求を通すこと、そしてアフリカの人々が契約の情報開示を求めることが条件になる。援助を申し出る国が多ければ多いほど、アフリカの国々は自国の利益を守りやすい。

トランプ政権もアフリカ経済の大きな「伸びしろ」に着目し、中国任せにせずにアメリカ主導で経済援助を行う戦略的必要性があるとみている。そのためには米企業が積極的にアフリカ投資に乗り出す必要がある。

欧米諸国が中国と同等、もしくはそれ以上の支援を行えば、誰もが恩恵を受ける。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2018年9月18日号掲載>

[2018年9月18日号掲載]

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中