最新記事

一帯一路

中国マネーはアフリカをむしばむ麻薬なのか

Chinese Aid and Investment Are Good for Africa

2018年9月18日(火)16時20分
J・ピーター・ファム (大西洋協議会アフリカセンター所長) アブドゥル・サラム・ベロ (同アフリカセンター客員フェロー) ブバカールシド・バリー (世界銀行アフリカグループⅡ理事長)

中国はこの資金の大半を活用して、中国企業が所有する港湾施設の隣に昨年、初めての国外の軍事拠点となる基地を開設した。米軍基地から十数キロと近く、今年5月には米軍機の操縦士にレーザーが照射されるという妨害行為が起きた。

ただし肝心なのは、中国の経済支援そのものが本質的に善か悪かという話ではない。アフリカ諸国が中国のカネを使って何をするかだ。

アフリカで不動産と資源の競争が激化していることは、理論上は、アフリカ諸国の政府の交渉力を強化する。問題は、アフリカの指導者がこの好機にどう対処できるかだ。あるいは、短期的な利益をもたらしても、長期的に多大なコストを生むような取引に甘んじてしまうかもしれない。

好機をうまく生かしている点で、ケニアの事例が参考になる。同国のウフル・ケニヤッタ大統領は今年8月末に訪米し、ドナルド・トランプ米大統領と会談。首都ナイロビと南東部の港湾都市モンバサを結ぶ高速道路の建設事業における融資契約を取り交わすための協議を進めることで合意した。このプロジェクトは米建設大手ベクテルが受注している。

ワシントンからとんぼ返りしたケニヤッタはFOCAC出席のため北京に向かった。ケニアでは昨年5月末、ナイロビとモンバサを結ぶ鉄道が開業したばかり。中国が出資、建設、運営を一手に担ったこの鉄道を手始めに、ケニアは中国からさらなる投資を引き出そうとしている。

中国資本の鉄道に加え、米資本の高速道路が完成すれば、ケニアは東アフリカの物流センターとして目覚ましい成長を遂げる可能性がある。

欧米諸国の出番もある

だが問題はアフリカのほかの指導者もこれを見習うか、だ。お粗末な統治や財政運営をごまかすために外国の援助に頼るなら、中国の「無条件の援助」は危険な麻薬になりかねない。

中国のアフリカ支援を「新植民地主義」とみる向きもある。資源を収奪し、最終製品を売り付けるばかりで、技術はほとんど移転されないというのだ。

しかしアフリカの指導者が中国の援助を戦略的に活用すれば、必要なインフラが手に入るばかりか、経済の持続的な成長も可能になる。世界銀行の試算によれば、アフリカ諸国がそれ以外の開発途上国の中央値並みにインフラを整備できれば、1人当たりGDPの伸びは年率1.7%に達するという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

習氏、王公安相を米との貿易協議に派遣=新聞

ビジネス

独首相、EUの共同借り入れ排除せず 欧州の防衛力強

ビジネス

独立したFRBの構造、経済の安定を強化 維持される

ワールド

フィンランド大統領「ウクライナ停戦は正しい方向に進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中