最新記事

日本政治

それでも私は辞めません......安倍首相の異例の長期政権が意味するもの

ABE JUST WON'T QUIT

2018年9月15日(土)16時20分
ウィリアム・スポサト(ジャーナリスト)

もう1つのスキャンダルは、学校法人森友学園をめぐるものだ。同学園が運営する幼稚園は教育勅語の導入など非常に昔ながらのカリキュラムを採用し、保守派政治家の一部に受けがいい。

16年、森友学園は開校予定だった小学校の建設用地として、大阪府にある国有地を評価額のわずか14%ほどで取得する契約を結んだ。格安での国有地払い下げが問題視されると、財務省は当初、地下の産業廃棄物などの撤去費用を考慮した正当な値引きだと説明。森友側との交渉記録は破棄したと主張したが、その後に文書が発見された。

これらの記録は国会に提出されたが、一連の流れの中で財務省側が公文書を改ざんする事件も起きた。文書から削除されたものの1つが、森友が開校予定だった小学校の名誉校長に就任していた安倍の妻、昭恵に関する記述だ(昭恵はその後、名誉校長を辞任)。

そんななかで、安倍の支持率は低下を続けた。世論調査によってばらつきがあるものの、内閣支持率は昨年初めの時点で55%前後に達していたが、今年4月には30%前後にまで落ち込んだ。政権関係者の間でほかにもスキャンダルが相次いだことを考えれば、通常なら自民党内で「首相降ろし」の動きが起きたとしてもおかしくない。

戦後の大半を通じて、日本の首相は規則正しいと言いたいほどの頻度で交代を繰り返してきた。現行憲法下の1947年以降、第2次安倍政権が発足するまでの65年間の歴代首相の平均在職期間はわずか約2年。01年に首相に就任した小泉純一郎は06年まで例外的な長期政権を率いたが、その後の6年間には6人の首相が誕生した。

そのせいで、日本は国際社会で明確な「顔」を示せないままだった。G7などの首脳会合に出席するのが毎回のように違う人物ならば、それも当然だ。

この点は首相官邸側も十分に意識している。内閣官房参与の谷口智彦は今年1月号の雑誌「月刊Hanada」への寄稿で日本は「長い闘い(ロング・ゲーム)」に臨んでいると述べた。

バブル経済が崩壊した90年頃から「私たちは総理大臣を、あたかも弊履(へいり)のごとく捨て続け」たと、谷口は記す。だが今や、「『モリ・カケ』ごときで」首相を取り換えるべきではないと、有権者は皆、考えているのだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

現代自、米国生産を拡大へ 関税影響で利益率目標引き

ワールド

仏で緊縮財政抗議で大規模スト、80万人参加か 学校

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中