最新記事

英EU離脱

ブレグジット支持の英保守党員に高まる不満 メイ首相への反旗広まる

2018年9月13日(木)10時51分

9月5日、英国の雨降る週末、年配の保守党員たちが、ソーセージと赤ワインを手に夜の庭に集まっている様子は、転覆を図ろうとする光景だと思えないかもしれない。写真は、バーベキューを主催したジョン・ストラッフォード氏。英スラウ近郊の自宅で8月撮影(2018年 ロイター/Peter Nicholls)

英国の雨降る週末、年配の保守党員たちが、ソーセージと赤ワインを手に夜の庭に集まっている様子は、転覆を図ろうとする光景だと思えないかもしれない。

だが、このような集まりは実際に英国各地の庭や公民館で起きており、こうした動きが、同国が欧州連合(EU)からどう離脱すべきかを巡って、英議会で行われる投票の鍵を握る可能性がある。

ビーコンズフィールドは富裕層が暮らすロンドン郊外のベッドタウンで、保守党の地盤だ。しかし混み合ったキッチンからは、EUと決別し英国の主権を取り戻すという、離脱支持派が抱いた「つかの間の夢」をメイ首相がいかに売り渡したかについて不満の声が聞こえてくる。

「首相は、実際はそうではないのに離脱しようとしている印象を与えることで、国を間違った方向に導いている」と、小規模ビジネスに投資しているというロジャー・ケンドリック氏は、保守党内で保守民主主義を推進する圧力団体の集会でロイターに語った。

「国を欺き、その報いを受けずに済むと彼女は考えている。われわれはだまされている」と、紙皿の食べ物を口にしながら同氏は話した。

ケンドリック氏の意見は看過できない。

約12万4000人いる保守党の一般党員は、資金を集めたり投票日に地元票を集めたりするなど、英政治システムにおいて重要な役割を担っている。彼らは主に無償でそうした活動を行っている、中には給料を得ている地元議員もいる。

こうした草の根運動の圧力により、ほんの一握りの議員がメイ首相の提案に反対票を投じただけでも、首相が現在EUと交渉している計画が台無しになる恐れがある。

3月29日の「離脱日」まで7カ月を切る中、2.6兆ドル(約288兆円)規模の英国経済と世界最大の貿易圏であるEUの今後の関係は危機に直面している。

EU離脱を巡り、英国内では意見が分かれたままだ。2016年6月に実施された英国民投票の結果は、離脱支持が52%、不支持が48%だった。国民投票を求めた保守党内でも同様だ。

英国各地の党員25人超に対する取材では、地方の一般市民と首都ロンドンの党指導部との間に横たわる「分断」は、ブレグジット(英国のEU離脱)よりも根深い可能性が明らかになった。

「20年かけてここまできた。ブレグジットにより、われわれの関係は土壇場に追い込まれた」と、ビーコンズフィールドのバーベキューを主催したジョン・ストラッフォード氏は言う。

「党議員の6、7割が『残留』を支持し、一般党員の同じく6、7割が『離脱』を支持した場合、保守党は事実上、終わりを迎えることになる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは157円半ば、10カ月ぶり高値 財

ワールド

ジェトロ、中国でのイベントなど20件超キャンセルに

ワールド

富裕国の開発援助が後退、米は2つ落として28位=シ

ビジネス

金利正常化の時期、経済・物価情勢見ながら判断=小枝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 8
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中