最新記事

政治

与党党首選で混乱のオーストラリア 首相の議員辞職で与野党逆転の可能性も

2018年8月23日(木)18時16分

8月23日、オーストラリアのターンブル首相(写真)は、与党自由党の過半数が党首選の再実施を求めれば、24日にも実施する考えを明らかにした。党内から退陣圧力が強まる中、きょうの段階では辛うじて首相の座にとどまった。シドニーで撮影(2018年 ロイター/AAP/Lukas Coch)

オーストラリアのターンブル首相は23日、与党自由党の過半数が党首選の再実施を求めれば、24日にも実施する考えを明らかにした。党内から退陣圧力が強まる中、きょうの段階では辛うじて首相の座にとどまった。

首相は21日の党首選でダットン内相(当時)を破ったが、ダットン氏と他の主要閣僚は23日に党首選の再実施を求めていた。

ターンブル首相は会見で、党首選再実施を求める書簡を過半数の署名とともに受け取った場合に限り、24日昼(日本時間午前11時)に党の会合を招集すると表明。会合で党首交代を求める動議が可決された場合、「私はこれを不信任決議とみなし、党首選に出馬することはない」と述べた。

既に複数の閣僚が辞任の意向を表明し、政権が危機に見舞われるなか、政府は議会を9月まで休会とした。

豪メディアは、党首選が再度行われることになればモリソン財務相が立候補する見通しと報じた。モリソン氏はターンブル首相を支持してきたが、報道によれば、以前から首相の座に就くことに意欲的だったという。

このほか2007年から自由党副党首を務めているビショップ外相も立候補すると報じられた。

ターンブル首相は「党内の一部勢力が反乱を起こし」、自由党を極端に保守的な方向に動かそうとしていると指摘。党内の少数派が他のメンバーに、トップ交代を強要しているとの考えを示した。

首相はまた、ダットン氏が政府から補助金を受けているデイケア施設において金銭的利害があるとの見方に言及。同国では議員が連邦政府の資金を受け取ることは憲法で禁じられている。首相は、国内の法務トップに対し、ダットン氏の議員資格を巡り助言を求めたと明らかにした。

首相の座を失った場合は議員を辞職するとも表明。連立政権はわずか1議席差で辛うじて議会の過半数を維持しており、この過半数が失われる可能性が出てきている。

野党・労働党のショーテン党首は議会で、自由党内の対立は「共食いのような振る舞いだ」と指摘し、「政府はもはや機能していない」と批判した。

頻繁な首相交代に、有権者や財界も不満を示している。豪カンタス航空のアラン・ジョイス最高経営責任者(CEO)は「政権内で起こっていることは、オーストラリアにいる誰にとっても失望を誘うものだ。財界は今後起こることに対する確実性と信頼を求めている。このような不確実性は何の役にも立たない」と述べた。

政局の先行き不透明感から、豪ドルは軟調、株式市場も下落して終了した。

[キャンベラ 23日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中