最新記事

健康

トランクス着用で「精子の量と質」が向上:最新調査で裏付け

2018年8月13日(月)15時00分
高森郁哉

睾丸が体外に「ぶら下がって」いる理由からしても… creacart-iStock

陰嚢(いんのう)を体に密着させるブリーフよりも、ゆったりとした構造で陰嚢が体に密着しないトランクスのほうが、精子の生成に関して良い影響を与える――。こうした通説が、米ハーバード大学の研究者らによる大規模な調査で裏付けられた。

睾丸が体外に「ぶら下がって」いる理由

ハーバード大学公衆衛生大学院のリディア・ミンゲス=アラルコン氏が率いた研究で、ヒトの繁殖を専門とする英学術誌「ヒューマン・リプロダクション」に論文が掲載された。

この話題を報じた英メディア「ザ・ガーディアン」によると、男性の生殖腺である睾丸の温度を体温よりも低く保つことが重要なのは、遅くとも1920年代には知られていたという。近年の研究では、男性の体から睾丸が自然にぶら下がり、一般的な体温の37度より3〜4度低い状態が、精子の生成にとって最も良いことがわかっている。

ハーバード大の調査

ハーバード大の研究チームは、2000〜2017年にボストンの病院で不妊症治療を求めたカップルのうち、18〜56歳の男性656人に調査を実施。対象者には、過去3か月間ではいた下着を、トランクス、ジョッキー(ブリーフのように陰嚢を密着させるが、丈が膝の上まであるタイプ)、ブリーフ、ビキニ(ブリーフよりも丈が短い)、その他から回答してもらった。

対象者のうち、53%が日常的にトランクスを着用していると回答。彼らの精子サンプルを分析したところ、他の下着をはく人に比べて、精子の濃度が25%高く、精子の総数も17%多かった。また、女性の子宮内での受精にかかわる運動能力が高い精子の割合も、トランクス着用者のほうが高かった。陰嚢を密着させず睾丸の温度を上げない下着のほうが、精子の生成に有利であることが改めて裏付けられたことになる。

精子減少に体が対抗している可能性も

さらに研究チームが対象者の血液サンプルを分析したところ、トランクス着用者は他の下着をはく人に比べて、卵胞刺激ホルモン(FSH)のレベルが14%低かった。FSHは精子の生成を促すはたらきをすることが知られている。

精子が減少したグループのほうがFSHが多かったという分析結果は、精子減少の信号が脳に送られ、脳が精子の生成を増やすホルモンを多く分泌するようなメカニズムの存在を示唆するものだ、と研究チームは推論している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、0.25%利下げ 世界経済とインフレの

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き トランプ関税の影響見極

ビジネス

スウェーデン中銀、政策金利据え置き 「今後も維持」

ビジネス

米との貿易戦争、ユーロ圏のインフレ率上昇し成長は減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 6
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 7
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 8
    ローマ人は「鉛汚染」でIQを低下させてしまった...考…
  • 9
    医師の常識──風邪は薬で治らない? 咳を和らげるスー…
  • 10
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 5
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 10
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中