最新記事

宇宙

ハッブル宇宙望遠鏡の夢の後継機、開発が大幅に遅れて、コストも天文学的に

2018年7月9日(月)18時50分
鳥嶋真也

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の想像図 (C) NASA/Northrop Grumman

<宇宙の始まりが見える宇宙望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の開発が遅れに遅れている。それでも開発が続く理由とは>

米国航空宇宙局(NASA)は2018年6月28日、新型の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」について、開発の遅れを理由に、打ち上げを2021年3月まで延期すると発表した。

2002年に開発が始まったこの望遠鏡は、幾度となくスケジュールの遅延を繰り返しており、コストも超過。それでも開発が続けられるのにはわけがある。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope、JWST)は、NASAを中心に世界が共同で開発している新型の宇宙望遠鏡で、かの有名な「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機にあたる。

ハッブルというと、遠くの宇宙にある星雲や銀河の写真を数多く送り届けていることでおなじみである。その光景は天文学者でなくとも息を呑むほどに美しい。

ハッブルは、私たちでも買えるような天体望遠鏡を大きくし、宇宙に打ち上げたような衛星で、人間の目で見える可視光や、人間には見えない赤外線、紫外線などを使って宇宙を観測している。

JWSTはその後継機と位置づけられているものの、ハッブルとは異なり、可視光で観測する能力はもたず、赤外線による観測のみに絞られている。

ただ、もちろんこれは「JWSTの性能が低い」というわけではない。これまでの人類の宇宙観測の中で、「宇宙は必ずしも人間の目で見えるものが真の姿ではない」、あるいは「赤外線を使えばもっとさまざまな宇宙の姿が見える」ということがわかり、そこで赤外線による観測に特化した高性能な宇宙望遠鏡――JWSTが求められたのである。

その証拠に、JWSTは宇宙の誕生後に初めて誕生した星の観測や、太陽系外にある惑星の探査などに使えると考えられている。

nasa0709002a.jpgJWSTの想像図。全体が望遠鏡になっており、誕生直後の宇宙や系外惑星の観測に挑む (C) NASA/Northrop Grumman

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米高官、中国レアアース規制を批判 信頼できない供給

ビジネス

AI増強へ400億ドルで企業買収、エヌビディア参画

ワールド

米韓通商協議「最終段階」、10日以内に発表の見通し

ビジネス

日銀が適切な政策進めれば、円はふさわしい水準に=米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中