最新記事

ブラジル

ブラジルの街中でサソリの大繁殖が始まった?昨年死者200人

2018年7月17日(火)20時00分
デービッド・ブレナン

飼い主の顔の上を這うペットのサソリ(サウジアラビア、リヤド) Faisal Al Nasser-REUTERS

<森林破壊の代償か、サソリが都市に侵入し、ゴキブリを餌に繁殖し始めた。食い止める方法はあるのか>

ブラジルの街中で、サソリに刺されて毒で死んだ犠牲者が昨年200人近くに達し、当局が全国にサソリ警戒令を出した。

英紙ガーディアンによると、森林破壊と都市の拡大で棲みかを追われたサソリが都市に侵入し、繁殖し始めている。

政府統計によると、2017年には全国で少なくとも184人が刺されて死んだ。2013年の死者が70人だったのに比べると大幅増だ。刺されて命拾いした人は12万6000人に達する。先週はサンパウロで4歳の少女がサソリの犠牲になり、改めてその危険が注目された。少女は病院に運ばれたが血清の備えがなく、別の病院へ運ばれる間に手遅れになったのだ。

ブラジルにいる4種類のサソリのうち、もっとも危険なのがイエロースコーピオン。それが今、乾いた草原にある古来の巣を出て、都市の下水やゴミ捨て場に移りすみ始めている。これらの場所では好物のゴキブリに不自由しないからだ。

サソリは生命力が極めて強い。代謝が低いので餌なして7カ月生きられる(ゴキブリがいればそんな必要もないが)し、単位生殖なのでオスがいなくてもメスだけで繁殖できる。

つまり、大量繁殖を妨げるものはほとんどない。「人間との接点は非常に大きい」と、ブラジルのブタンタン研究所の研究者、ロジェリオ・ベルタニは言う。「個人的には、事態は悪くなる一方だと思う」

当局はできる限り多くのサソリを捕獲しようとしているが、あまりに数が多い。アメリカーナ市の4人の捕獲チームは今年だけで8000匹捕まえた。チームを率いる獣医のホセ・ブリテス・ネトはエスタダオ紙にこう語った。

「この種は侵略的で、定着し、適応にも優れている」

webs0717-scorpion02.jpg
サソリは毒をもつだけでなく生命力も強い Rafael Cuto/iStock.

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中