最新記事

ベネズエラ

インフレ率1,000,000%、激減所得の穴埋めに紙幣刷るベネズエラの失政スパイラル

Venezuela Inflation to Hit 1 Million Percent This Year

2018年7月25日(水)17時58分
デービッド・ブレナン

ハイパーインフレ進行中というのにマドゥロ大統領は紙幣を刷り続ける(首都カラカス、2018年3月)

<IMFの予測ではベネズエラのインフレ率は年内に100万%に達する見込み。1930年代のドイツや2000年代前半のジンバブエに匹敵する惨事だという>

高い失業率、食料不足、減少する燃料備蓄、基本的な医薬品の欠如......すでにたいへんな苦境にあるベネズエラ。国際通貨基金(IMF)はこのほど、同国のインプレ率は2018年末までに100万%に達する可能性があると警告した。

ベネズエラのインフレ率はすでに高水準で、通貨ボリバルの価値は今年、史上最低にまで下落しかねない。危機的状況にもかかわらず、ベネズエラ政府は原油価格の急落による国家予算の穴を埋めるために、紙幣を印刷し続けている。

IMF西半球部門のアレハンドロ・ワーナー局長によれば、現在のベネズエラの状況はハイパーインフレにより国内通貨の価値が失われた1930年代のドイツや2000年代前半のジンバブエに匹敵する。

史上最悪の月間インフレ率を記録したのは、1946年のハンガリーのハイパーインフレだった。当時の通貨ペンゲーのインフレ率は4京1900兆%、物価は15.3時間ごとに倍増した。

ワーナーはブログで、ベネズエラの2018年の経済成長率はにマイナス18%で、2019年はさらにマイナス5%になると予測した。ワーナーは現在の状況を「深刻な経済・社会的危機」と評した。

「経済活動の崩壊、ハイパーインフレ、公共財の供給不足、補助金つきの食料の不足が、大規模な国外への移住につながっている。近隣諸国にも大きな影響を与えるだろう」と、ワーナーは指摘した。

経済統計の公表は停止

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、生活条件が悪化し、経済は回復の兆しを見せないため、すでにベネズエラから100万人以上が脱出した。UNHCRの推定では、ベネズエラを出国する移民は1日約5千人に達し、その多くが隣国コロンビアに向かう。

ニコラス・マドゥロ大統領は経済改革の実施を拒み、現在の危機を、国内の反政府派がアメリカやその他の競争相手国と手をくんで仕掛けた「経済戦争」のせいだとしている。政府機関は、国の崩壊の本当の姿を隠すために、経済統計の公表を停止している。

2015年12月以来、公式のインフレ率は公表されていないが、野党主導の国会は、5月のインフレ率は2万4600%を超えたと発表した。

ブルームバーグは独自に、ベネズエラの首都カラカス東部にあるベーカリーのコーヒー1杯の値段を調査し、経済指標として使っている。「カフェ・コン・レチェ指数」と呼ばれるこの指標によれば、過去12カ月間でインフレ率は6万%上昇した。上昇はさらに加速しており、過去3カ月のインフレ率は年率で30万%を記録した。

通貨の崩壊により、海外からの食糧や燃料、医療品の輸入もままならず、もともと低い生活水準はさらに悪化している。国の保健当局に適切な予防や治療のための資源がないため、麻疹やマラリアも流行している。

国民を飢えさせないため、マドゥロは今年4回、最低賃金を引き上げた。ロイター通信によれば、最低賃金は月300万ボリバルに達しているが、闇市場の為替レートではわずか1.14ドルだ。マドゥロはまた、食料価格の高騰に対抗するため労働者に追加の食事券を配ると約束した。


180731cover-200.jpg<本誌7/31号(7/24発売)「世界貿易戦争」特集では、貿易摩擦の基礎知識から、トランプの背後にある思想、アメリカとEUやカナダ、南米との対立まで、トランプが宣戦布告した貿易戦争の世界経済への影響を検証。米中の衝突は対岸の火事ではない>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独IFO業況指数、1月85.5に上昇 「経済は低位

ワールド

キリバスで中国警察が活動、犯罪データベース作成など

ワールド

ロシアの核戦力、95%が近代化済み=プーチン大統領

ビジネス

ECB23年決算、過去最大79億ユーロの損失 利払
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:開戦2年 ウクライナが敗れる日
特集:開戦2年 ウクライナが敗れる日
2024年2月27日号(2/20発売)

アメリカの支援が途絶えればウクライナ軍は持たない。「ロシア勝利」後の恐怖の地政学とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    【アウディーイウカ陥落】ロシアの近接航空支援や滑空爆弾に対しウクライナ軍の空域には穴が開いていた

  • 3

    ウクライナ戦争開戦から2年、NATO軍の元最高司令官が語る「敗北のシナリオ」

  • 4

    F16はなぜウクライナに届かない?──NATO事務総長が答…

  • 5

    アウディーイウカ制圧後、ロシア軍の攻撃は激減、戦…

  • 6

    大雪で車が立ち往生しても助けなし...「不信の国」中…

  • 7

    トランプもバイデンも、日本製鉄のUSスチール買収に…

  • 8

    アゾフ旅団がロシア軍陣地を「闇討ち」...暗視カメラ…

  • 9

    中国、景気停滞の次は余剰在庫のダンビング輸出? …

  • 10

    米大統領選、バイデンが撤退ならミシェル・オバマが…

  • 1

    プーチンの顔面に「異変」が...「頬どうした?」と話題に 外交の場での「奇妙な様子」にも注目集まる

  • 2

    ウクライナ攻勢を強めるロシアのドローン攻撃を、迎撃システム「バンパイア」が防ぐ「初の映像」が公開

  • 3

    毎日を幸福に過ごす7つの習慣の1つ目が「運動」である理由

  • 4

    米メディアのインタビュー中、プーチン大統領の「足…

  • 5

    日本人は知らない、能登半島地震に向ける中国人の視線

  • 6

    メーガン妃に「手を触られた」瞬間の、キャサリン妃…

  • 7

    【アウディーイウカ陥落】ロシアの近接航空支援や滑…

  • 8

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 9

    ゼンデイヤのスケスケなロボット衣装にネット震撼...…

  • 10

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオ…

  • 1

    日本人は知らない、能登半島地震に向ける中国人の視線

  • 2

    【能登半島地震】正義ぶった自粛警察が災害救助の足を引っ張る

  • 3

    一流科学誌も大注目! 人体から未知の存在「オベリスク」が発見される

  • 4

    情報錯綜するイリューシン76墜落事件、直前に大きな…

  • 5

    ルーマニアを飛び立ったF-16戦闘機がロシア軍を空爆?

  • 6

    プーチンの顔面に「異変」が...「頬どうした?」と話…

  • 7

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 8

    いよいよ来年に迫った「2025年問題」とは何か? リス…

  • 9

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 10

    「まだやってるの?」...問題は「ミス日本」が誰かで…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中