最新記事

インドネシア

知られざる鉄道ファンの聖地ジャカルタ──日本からの中古車両が活躍

2018年6月27日(水)17時30分
我妻伊都

外側に手すりが増設されたJR東日本の旧205系車両 撮影:我妻伊都

<インドネシアの首都ジャカルタは、日本で活躍した車両が再利用され、日本の鉄道ファンたちの隠れた聖地になっている>

人口2億5500万人を誇るインドネシア。その首都ジャカルタは1000万人を越える巨大都市として発展し続けている(ともに2015年)。一般的にジャカルタは工場が多く、観光客が訪れるイメージが少ないが、実は日本の鉄道ファンたちの隠れた聖地であることをご存知だろうか。

ジャカルタを走るKRL(首都圏通勤電車)には日本で活躍した車両が再利用され、日々ジャカルタ市民の足としては走り回っているのだ。

横浜線や埼京線、南武線の205系、千代田線の6000系など1000両

現在、多く見かけるの車両は、JRで使われていた205系と呼ばれる車両で、横浜線や埼京線、南武線などで使われた車両だ。他にも東京メトロ千代田線で使われた6000系など合計1000両ほどの日本の車両がジャカルタで再活躍をしている。

東京の八王子在住の会社員の中村さんは、横浜線で通勤するので205系が懐かしいと語る。

「僕はいわゆる撮り鉄なのですが、205系には特に思い入れがあるのでジャカルタでは乗り鉄にもなります。座席はそのまま利用されており、エアコンも車内の蛍光灯もそのまま使われています。横浜線時代と違うのは、窓にUVカットフィルムが貼られていることや車外の扉の左右に手すりが増設されている点です。赤道に近く日差しが厳しいインドネシアであることと、窓ガラスの粉砕防止の意味もあるのでしょう。増設の手すりは、階段で乗車する駅もあるから追加されたものです」

記者が初めてジャカルタを訪れた2011年には車体の行き先表示が日本語のままだったりと車体に日本語が多く残されていたが、現在は、外観も車内も整備されて日本語表記はほどんど見ることはなくなっている。2011年当時は東急電鉄の旧車両もよく見かけた。

wagatuma02.JPG

往時そのままの座席。ローカル線で座席がクッションなのは世界的には珍しい

wagatuma03.JPG

このアングルだと日本の車内と間違えそうだ

wagatuma04.JPG

205前のモハの消された跡が確認できる205系車体

アジア通貨危機の財政難から

ジャカルタを走る日本の車両がJR東日本や東京メトロ、東急などと首都圏に偏っているのには理由がある。それは、東京都とジャカルタが姉妹都市(1989年10月23日〜)だからだ。

日本の中古車両がKRLへ導入されたきっかけは、アジア通貨危機でインドネシアが深刻な財政難に陥り、不足した新規車両を補うために東京都から無償譲渡を受けたことがきっかけだった。以降、定期的に導入し現在にいたる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中