最新記事

宗教

超訳コーランの言葉で幸せの指南

2018年6月22日(金)17時20分
アルモーメン・アブドーラ(東海大学・国際教育センター准教授)

イスラム教は人々の日常生活に深く根ざしている Erik de Castro-REUTERS

<日本人にとって宗教はマイナスのイメージが強いが、イスラム教の経典コーランの中から日常生活にも役立つ一節を超訳で紹介>

日本で暮らしているとあまり実感できないが、生活の中で宗教が大きな意味を持っているという人は世界にたくさんいる。一方、当たり前だが、他国の文化や宗教を自国の尺度で見ようとすると、訳が分からなくなる。そして他文化や他宗教を理解するとなると、司馬遼太郎の言うように、「他国を知ろうとする場合、人間はみな同じだという高貴な甘さがなければ、決して分からないし、同時にその甘さだけだとみな間違ってしまう」。このあたりも、人の世の常である。
 
文化や宗教は、あらゆる歴史的事情とその出来事の下で集積されてきたものの結果だと考えられている。その文化と宗教は、無限とも言えるほど多くの破壊的事情を経験し、1つの枠の中に存在しながらも、互いに衝突や矛盾をし合っている。その矛盾やずれを整え、またその中に混入した異物や本質でない要素を取り払って、原形のようなものを取り出せないかという思いが最近、自分の中に増していくばかり。

イスラムの原形とは何か? その原形を取り出して見せることは可能なのか? そう考えたとき、真っ先に頭に浮かぶものはコーラン(イスラムの聖典)の存在である。

「イスラムの原形」や「宗教」という言葉を使うと、読んでいる人を必要以上に緊張させてしまい、「なんだか小難しい。やめとこ、やめとこ」と避けられてしまいそうである。

そこで、私が教えている大学で学生たちに質問してみた。「『宗教』という言葉はどの言語にもありますね。みなさんがそれを聞いたとき、マイナスの印象を持ちますか? それともプラスの印象を持ちますか?」

85人のうち3人だけが「プラスの印象を持つ」と答え、残りの82人は、迷わず「マイナスの印象を持つ」と答えた。圧倒的なマイナスイメージである。さらに、「なぜマイナスの印象を持つのか」と聞くと、「信じるものがなければ生きていけないようだから」「精神的に弱い感じがするから」という予想外の答えが返ってきた。

どうやら「宗教」という言葉とその意味合いは、イスラム教徒、とりわけアラブ人と日本人とでは根本的に違っているようである。このときの学生たちとのやりとりから、私には次のことが分かった。

日本人がイスラム教をとらえるとき、日本語の「宗教」という言葉を通して判断し、評価しているということだ。「宗教」と聞いただけでマイナスの印象を覚える日本人と、「宗教」という言葉に信頼や敬い、道徳などを連想するイスラム教徒は、どのようにしてコミュニケーションを取ればいいだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中