最新記事

メディア

アジア駐在の欧米特派員はセクハラ男だらけ

2018年6月21日(木)18時00分
ジョアナ・チュー(AFP中国特派員)

アジアに派遣された男性は本国と違う顔を見せる。北京で3月に行われた第13回全国人民代表大会の外国人記者受付(2月) VCG/GETTY IMAGES

<アジアで活躍する欧米ジャーナリストの性的モラルの低さを知ってほしい――しかも「苦しむ女性たち」の記事を現地から発信するのは彼らだ>

今でこそ筆者はメディア業界における女性と社会的弱者の権利擁護を訴える活動家だが、中国で仕事を始めた7年前は全く違う立場にいた。中国系カナダ人の記者である私は、当時23歳。仕事を通じて知り合った何人かの男にとって、私は仲間ではなかった。獲物だった。

狙われる獲物から天敵と戦う活動家に変身するまでの道のりは平坦ではなかった。セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)を受け、力ずくで襲われ続けた。タクシーに相乗りしたジャーナリストは、私のアパートに着くと一緒に降りてきた。てっきりそれぞれの家に帰ると思っていたのに、彼には別の期待があったようで、突然キスしてきた。

ナイトクラブで会ったジャーナリストに、強引に連れ出されたこともある。私は泥酔していて、同意もへったくれもないのは明らか。酔いつぶれた女性にセックスを強要するゲスな男だった。北京のレストランでは、欧米の広報担当のお偉いさんが私のドレスの下に手を入れ、あそこをつかんだ。

身体的な被害だけではない。外国人特派員たちから何度も「ペニス写真」を送り付けられた。それも監視が厳しいチャットアプリ、微信(ウェイシン、WeChat)を使って。中国の監視当局のどこかには、ジャーナリストの性器写真の膨大なコレクションがあるに違いない。

「#MeToo(私も)」運動は、先進国でもセクハラが日常茶飯事である事実を教えてくれた。しかし、私に言わせれば国外で働く男たちの行儀はずっと悪い。カナダでは、ここまで不快な経験はしなかった。そして幸いにして、私は今の職場でセクハラ被害に遭ったことはない。でも私ほど幸運でない人もいる。セクハラはこの業界に限ったことではないが、報道の質には深刻な影響をもたらしている。

最近、中国外国記者協会(FCCC)の集まりで、この手の残念な話が出た。前FCCC会長でロサンゼルス・タイムズ紙の北京支局長のジョナサン・ケイマンが、同業者のフェリシア・ソンメズに対する性暴力で告発されたのだ。ケイマンは1月に友人のローラ・タッカーに対する不適切な性的行為が発覚し、会長職を辞していた。

そして2件目の告発後、ロサンゼルス・タイムズはケイマンを停職処分とし、会社として調査を始めた。しかし非営利団体のオンライン新聞「香港フリー・プレス」によると、最初の告発後には多くの男性特派員がネットで被害者のタッカーを誹謗中傷したという。

被害を受ける「現地スタッフ」

セクハラがまかり通るアジアの文化に浸っている男たちは、アジア発の報道をゆがめかねない。何しろ女性の同僚を餌食にしている人物がニュースの書き手になるのだ。セクハラ常習犯が、アジアの女性の苦しみをテーマにした報道で主導的な役割を果たし、人権についての特集を組んだと胸を張る姿を、私は何度も見てきた。

あまりにも多くの記事がアジアの男だけを取り上げ、女はセックスの対象か犠牲者として片付けている。こうした見方と、それに基づく偏向した報道は、アジア全域に見られるパターンだ。

仲間うちのそんな環境に反発し、女性のために声を上げた男性もいるが、彼らはごく少数だ。香港や中国で出会ったメディア業界の男たちの特権意識や行動は、故郷カナダのバンクーバーや、学生時代を過ごしたニューヨークでは目にしたことがない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F

ワールド

イラン抗議デモ、死者3000人超と人権団体 街中は

ワールド

韓国、米のAI半導体関税の影響は限定的 今後の展開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 6
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中