ニュース速報
ワールド

アングル:イラン攻撃で中東観光業に激震、「安全・高級」イメージ危機に

2026年03月04日(水)09時58分

写真はドバイの観光客。2020年3月、アラブ首長国連邦のドバイで撮影。REUTERS/Satish Kumar

Joanna Plucinska Ilona Wissenbach

[ロ‌ンドン/フランクフルト 3日 ロイター] - 年間約3670億ドルの経済規模‌を誇る中東の観光産業には、イスラエルと米国によるイラン攻撃で激震が走​っている。アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビからドバイに至るまでの地域が近年、数十億ドルを投じて築き上げてきた安全で高級なリゾ⁠ート地のイメージが危機に瀕している。

旅客​数で世界屈指の規模のドバイ国際空港を含めた中東の主要ハブ(拠点)空港では、フライトの大半が欠航となり、数万人の乗客が足止めされる事態になった。これは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以来の打撃である。

ドバイ空港と、ランドマークとなっている高級ホテルのブルジュ・アル・アラブ・ジュメイラもイランの報復攻撃の被害を受けた。

世界旅行⁠ツーリズム協議会(WTTC)は2025年に外国人旅行者が1940億ドルを消費したと推計しているが、今や警戒感が広がっている。

データ企業エアーDNAによると、UAEのバケーションレンタルのキャンセル件数は2月28日に約8450件と2倍超に膨らんだ。これら⁠の大半は3月​の滞在予約客だった。

アイルランドの格安航空会社(LCC)ライアンエアーのマイケル・オライリー最高経営責任者(CEO)は3日、記者団に対して「中東への予約が大幅に落ち込んでいる」と述べ、イースター休暇を控えてポルトガルやイタリア、ギリシャなどへの短距離路線の需要が急増していることを明らかにした。

その上でオライリー氏は「この状況は長く続かないだろうから、長期的な傾向にはならないと推測する。しかし、湾岸地域への航空旅行に対する信頼を損なったことは疑いようがない」と語った。

ドバイ観光局は3日、訪問者⁠の安全が最優先事項であるとし、ホテルに対し、影響を受けた宿泊客への支援を要請‌したとの声明を出した。

<最大で560億ドルの逸失も>

コンサルティング会社ツーリズム・エコノミクスは、紛争がどれだけ続くのかに⁠よって2026年⁠に中東を訪れる観光客は予想より2300万―3800万人減る可能性があるとのレポートを出した。同社のヘレン・マクダーモット氏とジェシー・スミス氏は「これには紛争直後の期間を超えて予想される心理的影響も含まれる」と指摘し、観光客支出の逸失額が約340億―560億ドルになると試算した。

中東へのクルーズ船や航空便を手配している旅行大手TUIのドイツ責任者ベンジャミン・ヤコビ氏は、予約客は状況の沈静化を望んでいるも‌のの「現時点では見通せない」と言及。中東のハブ空港閉鎖を受けて旅行予約者が混乱を回避しようと​動いたた‌め、アジアと欧州の間の航空券の運賃は⁠急騰している。

ヤコビ氏はベルリンでロイターに対し​て「需要減は確実なものの、どれほど落ち込むのかは武力衝突の今後の行方次第だ」と説明。同社は旅行客が西地中海地域を選ぶ「一定のシフト」が見られるとしながらも、「現時点では全てが非常に不安定だ」と語った。

<旅行続ける船客も>

紛争の勃発後、数千人が中東からの脱出を急いだ。米国はイランを攻撃した数日後の2日、米国人に対して退去を呼びかけた。

ドバイに滞在していたアンブラ・チェッサさんは、イタリアに戻る臨‌時チャーター便に搭乗した。当時の様子を「空港に着くと直ちに『すぐに搭乗してください、1時間後に出発します』と言われた」と振り返る。

一方、イングリッド・オエラーズさんはカタールの首都ドー​ハに寄港中のクルーズ船に乗っていた際、軍用機とヘリコプターが⁠上空を旋回するのを目撃した。「不気味な光景だった」と語ったものの、船内はかなり平常だったとしてこう話した。「私も含め、多くの人はまだ怖がり心配しているが、ここでは誰も過剰反応していない。皆が落ち着いている」。

ドバイなどに立ち寄るクルーズ​船で妻、2人の子どもと旅行中の英国人のIT技術者デイビッドさん(42)は、状況は怖いというよりも非現実的に感じられたと話す。

ロイターが入手した映像によると、乗客たちは依然として船上でくつろぎ、水着を着てデッキで踊っていた。

デイビッドさんは「ドバイは初めてだが、不安は感じていない」とし、「旅行を諦めることはないだろう。少なくとも現時点ではね」と打ち明けた。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中東紛争は好機、ブラジル石油投資誘致に追い風=シェ

ビジネス

中国製造業・非製造業PMI、2月はともに2カ月連続

ワールド

トランプ米政権、テンセントのゲーム会社出資維持巡り

ビジネス

航空・観光業界、中東紛争への対応に奔走 2万便超が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 4
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 5
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 6
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中