あの男が帰ってくる ! ポルノ法違反の過激なイスラム急進派代表が逃亡先から
政治の季節に入るインドネシアで、次期大統領選候補と目されるイスラム教急進派代表の動きに注目が集まっている Beawiharta Beawiharta-REUTERS
<サウジでの「逃亡生活」をしているイスラム急進派の代表が近く帰国するという。来年の大統領選に向けインドネシアに政治の季節がやってくる>
インドネシア国家警察は6月16日、イスラム教急進派組織「イスラム擁護戦線(FPI)」のハビブ・リジック・シハブ代表に対する「ポルノ規制法違反」容疑での捜査について「証拠不十分」として捜査を打ち切ることを明らかにした。これにより警察の捜査を逃れるため2017年の5月以降サウジアラビアで「逃亡生活」を続けていたシハブ代表が近く帰国する可能性が出てきた。
なぜこの時期に、そしてなぜ捜査打ち切りなのか警察は一切詳しい経緯を発表していない。このために捜査中止を巡ってあらゆる憶測が飛び交い、過激なデモや集会、そして問題発言で社会不安を煽ってきた人物の帰国に一般のインドネシア人からは「なぜ」という疑問と同時に「あの男が帰ればまた何かが起きる」との不安が広がっている。一体インドネシアに何が起きているのか?
ポルノ法違反容疑者になるも海外逃亡
シハブ代表は急進派イスラム教指導者として一部の狂信的な信徒の間で尊敬と人気を集めていた。その影響力を背景に2016年9月ジャカルタ特別州のバスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)知事が行った発言をとらえて「イスラム教を冒涜した」と攻撃を開始。反アホック集会、デモを組織して「知事即時辞任」「知事即時逮捕」を訴え、デモの一部が暴徒化、警察部隊と衝突する事態も起きた。
インドネシアの人口の約88%を占めるイスラム教徒に対し、アホック知事は中華系インドネシア人で仏教徒だったことも作用し、アホック知事は「宗教冒涜罪」で有罪判決を受け、知事も辞職に追い込まれた。
このほかにキリスト教徒を冒涜した発言や独立の父スカルノ初代大統領や国家原則「パンチャシラ」への侮辱発言などで「死者侮辱、国家シンボル侮辱罪」の容疑者にも指定されている。それでも一向に反省せず調子に乗りすぎたシハブ代表に治安当局は2017年5月19日、「ポルノ規制法」違反の容疑者として警察への出頭を求めた。親しい女性知人との間でチャットアプリを通してわいせつな会話をしていたこと、その会話がネットに流失したことがポルノ法違反に当たると判断したのだ。イスラム聖職者にとってこの「ポルノ規正法違反」は最も恥ずかしいものであった。
このためシハブ容疑者は容疑を否定しながらも国外に脱出、サウジアラビアで悠々自適の「逃亡生活」を送っていた。