チョコ原料の甘くない現実 フェアトレード制度はカカオ農家を救えるか?
貧困ライン
プレミアム下落の一因は、カカオ豆の供給過剰によって国際価格が、過去9年で最低の水準に下落したことにある。それでも、こうした認証スキームは、農家の手取りを増やすことで、農家が貧困を脱し、ショックにも耐えられるようにすることを目的の1つとしている。
西アフリカの農家は、世界のカカオ豆の3分の2を生産しているが、そのほとんどが世界銀行が定める国際貧困ラインである1日2ドルを下回る水準で生活している。
UTZは、チョコレート会社が、カカオ豆生産者を搾取して貧困を強いていないことを消費者に示すために利用できる認証制度の1つに過ぎない。だがその人気はうなぎ上りで、同認証を受けたカカオ豆は、2013年の約69万トンから、2017年は145万トンへ急増した。
成功の背景には、UTZが農家に支払われる価格に基準を設定していないことがあると、関係者は指摘する。対照的に、フェアトレードは、最低価格と固定プレミアムを唯一設定している認証制度だ。
「買う側の立場からすれば、同じ豆に支払う価格が単純に安くすむということだ」と、民間団体バイオダイバーシティ・インターナショナルのバリューチェーン専門家、ディートマル・ストヤン氏は言う。「(企業の)コスト構成にとっては素晴らしいが、カカオ農家にはそうではない」
レインフォレスト・アライアンスのアレックス・モーガン氏は、プレミアム下落が、必ずしも農家の状況悪化を意味しないと語る。農家が、カカオ豆をより多く販売していたり、経営基盤を強化している可能性があるからだ。
ハーシーは、プレミアム下落についてはコメントしなかったが、生産農家に対し、生産性を向上する機材や技術の提供など、貧困からの脱出に向けた包括的な支援活動を行っているとロイターに回答した。
マースは、農家の低収入は問題であり、改善を促す方法を検討していると回答。戦略の一環として、より病気に強く、生産性が高いカカオ豆のゲノム解析に投資していると述べた。
「カカオ豆の健全性や生産性、品質向上に科学を役立てることが有益だと考えている」と、同社の広報担当者はメールで回答した。
伊フェレロは、農家の収入についての質問に返答しなかった。