チョコ原料の甘くない現実 フェアトレード制度はカカオ農家を救えるか?

フェアトレード認証マークが付けられたチョコレート。ロンドンで2017年4月撮影(2018年 ロイター/Neil Hall)
世界のチョコレート会社は、貧困撲滅に向けて導入された認証制度を通じたカカオ豆の調達を増やしており、2020年までにより倫理的なサプライチェーンを構築するという自ら掲げた目標の達成を急いでいる。
しかし、カカオ農家を悩ませているのは、こうした倫理的で持続可能な生産支援制度下で支払われるプレミアムが低下していることだ。
森林破壊や児童労働、低賃金に対する業界の取り組みが不十分だとの強い批判を受け、米マースからハーシー、伊フェレロに至る大手チョコレート会社は、2020年までに倫理的かつ持続可能な原料調達へ完全に切り替えると表明している。
こうした企業による買い付け増加で、フェアトレードやレインフォレスト・アライアンス、UTZ認証などの団体から持続可能との認証を受けた農家によるカカオ豆供給は、ここ数年で急増している。
これら主要3認証を通じたカカオ豆の売上げは、2013年の56万4769トンから、2016年は95万3458トンに増えた。これは、世界全体のカカオ供給の20%を占める。
だが、業界最大の認証スキームで、世界の独立系認証カカオ豆の半分以上を取り扱っているUTZ認証のデータによると、農家がこうした認証を得たカカオ豆から受け取るプレミアムは、この5年間で約3分の2に減少した。
「現在の状況は、バリューチェーンの長期的な持続可能性を損なうと考えている」。メーカー100社以上が加盟する世界カカオ基金(WCF)のティム・マッコイ氏はそう語る。
UTZ認証が今週公表したデータによると、同認証を得たカカオ豆の販売で農家が受け取るプレミアムは、2013年の1トン当たり122ユーロ(約1万5000円)から、昨年は83ユーロにまで減少している。
認証農家は、生産した全てのカカオ豆をUTZ認証制度を通じて販売するわけではない。その他のカカオ豆がプレミアム抜きの一般市場価格で販売されると想定したロイターの試算によれば、2017年の平均プレミアムは、1トン当たり67ユーロにとどまる。
「UTZは、取引者数が多いが、その影響力は低下している」と、カカオ農家の収入向上に取り組む団体、カカオ・フォア・チェンジの創設者フェルナンド・モラレスデラクルス氏は言う。