トランプ、北朝鮮への拉致問題議題化とバーターで日本に通商政策の譲歩求めるか?
最悪のシナリオ
日本側がとりわけ懸念するのが、米国が北朝鮮という安全保障問題で日本の要求を聞き入れるのと引き換えに、農業や自動車分野の市場開放や、2国間協議を迫ってくること。
安倍首相はトランプ大統領に対し、米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の破棄だけで北朝鮮と合意するのではなく、日本を射程に収める短・中距離弾も含めた全ての核・ミサイル開発の放棄を迫るよう念押したい考え。日本人拉致問題も米朝会談の議題にするよう伝える。
「では、経済問題ではこうしろ、とトランプ大統領が言ってくるのは目に見えている」と、日本側の関係者は言う。「最悪のシナリオは、2国間交渉に持ち込まれること。次に最悪なのは、(大規模金融緩和を続ける)日本のマクロ政策の是正を求めてくること。アベノミクスに影響する」と話す。
日本政府内では、まず米国が現在の条件のままTPPに参加し、そこから新たな条件を追加していく2国間交渉に応じる案も検討されている。「結果として2国間FTA(自由貿易協定)と同じものができる。そういう道も探っている」と、関係者は明かす。「しかし、大統領の琴線に触れるか分からない」とも語る。
複雑に絡む中ロとの関係
安倍首相にとって、今回の首脳会談のタイミングも良くない。米国は通商や南シナ海問題をめぐり中国と、英国で起きた毒殺未遂事件やシリア問題をめぐりロシアと関係が悪化している。
同盟国である日本は、逆に中国と関係を改善、ロシアと経済協力を強めようとしており、米国の外交政策とズレが生じている。
訪米中にトランプ大統領とのゴルフが調整されており、野党議員の中からも「ラウンド中、貿易赤字、貿易赤字とささやかれ続けるのではないか。いっそのこと、今回の訪米は国会が認めないほうがいいのでは」との声が漏れる。
自民党の河井克行総裁外交特別補佐は「戦後のあらゆる外国首脳との会談の中で、今回の日米首脳会談が、最も重要なものになることは間違いない」と話す。
(久保信博、リンダ・シーグ、金子かおり 編集:田巻一彦)