最新記事

日米首脳会談

トランプ、北朝鮮への拉致問題議題化とバーターで日本に通商政策の譲歩求めるか?

2018年4月16日(月)16時24分


最悪のシナリオ

日本側がとりわけ懸念するのが、米国が北朝鮮という安全保障問題で日本の要求を聞き入れるのと引き換えに、農業や自動車分野の市場開放や、2国間協議を迫ってくること。

安倍首相はトランプ大統領に対し、米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の破棄だけで北朝鮮と合意するのではなく、日本を射程に収める短・中距離弾も含めた全ての核・ミサイル開発の放棄を迫るよう念押したい考え。日本人拉致問題も米朝会談の議題にするよう伝える。

「では、経済問題ではこうしろ、とトランプ大統領が言ってくるのは目に見えている」と、日本側の関係者は言う。「最悪のシナリオは、2国間交渉に持ち込まれること。次に最悪なのは、(大規模金融緩和を続ける)日本のマクロ政策の是正を求めてくること。アベノミクスに影響する」と話す。

日本政府内では、まず米国が現在の条件のままTPPに参加し、そこから新たな条件を追加していく2国間交渉に応じる案も検討されている。「結果として2国間FTA(自由貿易協定)と同じものができる。そういう道も探っている」と、関係者は明かす。「しかし、大統領の琴線に触れるか分からない」とも語る。

複雑に絡む中ロとの関係

安倍首相にとって、今回の首脳会談のタイミングも良くない。米国は通商や南シナ海問題をめぐり中国と、英国で起きた毒殺未遂事件やシリア問題をめぐりロシアと関係が悪化している。

同盟国である日本は、逆に中国と関係を改善、ロシアと経済協力を強めようとしており、米国の外交政策とズレが生じている。

訪米中にトランプ大統領とのゴルフが調整されており、野党議員の中からも「ラウンド中、貿易赤字、貿易赤字とささやかれ続けるのではないか。いっそのこと、今回の訪米は国会が認めないほうがいいのでは」との声が漏れる。

自民党の河井克行総裁外交特別補佐は「戦後のあらゆる外国首脳との会談の中で、今回の日米首脳会談が、最も重要なものになることは間違いない」と話す。

(久保信博、リンダ・シーグ、金子かおり 編集:田巻一彦)

[東京 16日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中