最新記事

SNS

フェイスブックは個人情報悪用の張本人

2018年3月29日(木)18時15分
ウィル・オリマス(スレート誌記者)

歴史を左右した可能性?

要するに今回の事件では、有権者に候補者のメッセージを効率的に伝えると称して、うさんくさい選挙コンサルタントがうさんくさい手を使っていた。

フェイスブックにしてみれば、無節操なアプリ開発者が当時の寛大な利用規約を悪用したせいで、窮地に追い込まれたことになる。ツイッターなど他のプラットフォームも同様に悪用される可能性がある。

そう考えれば、フェイスブックの幹部たちの的外れな言い訳も納得できる。彼らはそれほど問題のある行為をしたと考えていないのだ。なかでも最高情報セキュリティー責任者のアレックス・ステイモスは、これをデータの「漏洩」と報じた3月17日付の英ガーディアン紙に反論した(このツイートは既に消去。同氏が8月に退社するとの報道もある)。

もしデータの「漏洩」があったのなら、フェイスブックは州政府や米連邦取引委員会(FTC)から法的責任を問われる可能性がある。

もしもデータの流出がなく、フェイスブックのセキュリティーも破られていなかったのなら、なぜ今回の件で(悪徳会社ケンブリッジ・アナリティカだけでなく)フェイスブックまでが非難されるのか。

事が重大過ぎるからだ。問題のデータが、例えば冷蔵庫の販売や迷惑メールの送信に使われたくらいなら、こんな大騒ぎにはならなかった。しかしトランプの大統領選勝利にフェイスブックが何らかの貢献をしていたとするなら一大事だ。なにしろあれで歴史の流れが変わったのだから。

それに、トランプ陣営が選挙戦でフェイスブックを大いに活用したことは分かっている。ブレグジット(イギリスのEU離脱)推進派も同様だったし、それにはケンブリッジ・アナリティカも関与していた。

しかし別な理由もある。世界中の人に無料のネット・サービスを提供し、代わりに利用者の個人情報をひたすら収集して稼ぐ仕組みを真っ先に確立したのがフェイスブックだからだ。

フェイスブックは貴重なデータをケンブリッジ・アナリティカという悪徳業者に不正使用された被害者ではない。不正を働いても使いたくなる種類の膨大なデータを集め、整理して提供した張本人なのだ。

これは悪魔との取引か

似たようなビジネスモデルの企業は多い。広告料収入でウェブサイトを運営するやり方も昔からある。しかしフェイスブックは世界中のどの企業よりも膨大な数のユーザーに個人情報を提供させ、それを第三者が広告料と引き換えに利用し、商売に使うことを認めてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ新首相、通貨高問題で緊急対応必要と表明

ワールド

米政権、コロンビアやベネズエラを麻薬対策失敗国に指

ワールド

政治の不安定が成長下押し、仏中銀 来年以降の成長予

ワールド

EXCLUSIVE-前セントルイス連銀総裁、FRB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中