最新記事

中国政治

中国メディア、国家主席の任期制限撤廃めぐり批判をけん制

2018年3月12日(月)17時36分

3月12日、中国国営メディアは、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で前日に採択された、国家主席の任期規定を撤廃する憲法改正について、その正当性を主張し、批判的な見方をけん制した。写真は習近平国家主席。北京で11日撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

中国国営メディアは12日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で前日に採択された、国家主席の任期規定を撤廃する憲法改正について、その正当性を主張し、批判的な見方をけん制した。

憲法改正により、国家主席の任期を2期までとする規定は撤廃され、習近平国家主席が生涯にわたり地位を維持することが可能となった。

全人代での採決に先立ち、中国のソーシャルメディアでは任期規定の撤廃に批判的な投稿が相次ぎ、北朝鮮や毛沢東氏に対する個人崇拝に関連付けて懸念を示すコメントもあった。

中国共産党機関紙の環球時報は論説記事で、「中国がたどるべき道筋の鍵となるのは、習近平同志が中心に位置する強い党指導部を支持し、党中央委員会にしっかりと従うことだという確信を強めている」と論評。

欧米の政治システムは発展途上国に当てはまらず、悲惨な結果をもたらすという現実をここ数年で目撃したと主張した。

英字紙チャイナ・デーリーは、人民日報がこれまで報じたように、今回の憲法改正は「いかなる指導者にとっても終身支配を暗示」しないと強調。

終身支配を意味すると主張する欧米の一部の人々は、中国に対して根強い思想的偏見があると批判した。

主要国営メディアがソーシャルメディア上で保有するアカウントでは、コメントセクションが使えなくなるか、共産党を称賛するコメントしか読めないようになっているが、検閲による削除を免れた批判的コメントもある。

ミニブログ「微博(ウェイボー)」のユーザーは「称賛を受けている社会主義がどのようにして君主制を確立する法律となってしまったのか」と嘆いた。

米人権団体「ヒューマンライツ・イン・チャイナ」は、ここまでの権力集中化を認めることは大きなリスクを伴うと指摘。エグゼクティブ・ディレクターのシャロン・ホム氏は「任期を2期までとする規定の撤廃は毛時代の痛い教訓を無視し、中国の人々を再び大規模な苦しみや虐待、国家的大災害にさらすことになる」と批判した。

[北京 12日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中