最新記事

貿易戦争

トランプが世界に放つ「異常」関税、専門家が見る5つの論点

2018年3月9日(金)10時36分

3月5日、米国に輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すトランプ米大統領(写真)の計画は、世界的な反発を呼んでいる。ワシントンで2月撮影(2018年 ロイター/Jim Bourg)

米国に輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すトランプ米大統領の計画は、世界的な反発を呼んでいる。

では、こうした特定の関税を課すことが、なぜ貿易専門家の間で論争の的となっているのだろうか。

●全ての国が対象に

特定の国々から「投げ売り」あるいは不当に助成された輸入品に対して米国が頻繁に課す報復関税とは異なり、トランプ氏の鉄鋼・アルミへの関税は全ての国に適用される。

これらは「セーフガード」的な関税であり、ある特定の産業に深刻な損害を及ぼしかねない突発的な輸入の急増を阻止するための緊急輸入制限措置である。これに対し、米国の鉄鋼・アルミ業界はそのような脅威に直面していないとの批判もある。

トランプ氏が提案する関税は広範囲に及ぶ鉄鋼・アルミ製品を対象としており、強硬な姿勢がうかがえる。

●法的な異議申し立ては困難

緊急輸入制限は世界貿易機関(WTO)協定で認められている合法的な措置。だが、それに対するチェック機能は弱い。

同措置を講じる際は、主要な供給国に対して補償も提供する想定だった。それは元々、輸入制限措置を講じる国が、経済的影響のバランスを取るため他の製品の関税を引き下げることを意味していた。昨今では 多くの関税はすでに低いため、これには以前ほどの実効性がない。

したがって、影響を受ける国は、米国からの輸入品に関税を課したり、他の措置を講じたりすることによって補償を獲得しなくてはならない。だが、3年間はそうすることが許されていない。

もしWTOに提訴した場合、補償を受ける権利を失いかねず、何年にも及ぶ法廷闘争が始まるだけかもしれない。仕返しのため認められていない措置に出るなら、報復合戦に突入する恐れもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル155円台へ上昇、34年ぶり高値を更新=外為市

ビジネス

エアバスに偏らず機材調達、ボーイングとの関係変わら

ビジネス

独IFO業況指数、4月は予想上回り3カ月連続改善 

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中