最新記事

認知症

アルツハイマー病、治療薬は3年以内、ワクチンは10年以内に実用化の見込み

2018年3月30日(金)18時50分
松丸さとみ

臨床試験の最終段階にある vladans-iStock

<アルツハイマー病の症状を抑える薬は存在するが、病気そのものを治療する薬は今のところ存在しない。しかしまもなくこれが変わるかもしれない>

「人生を変える」薬が臨床試験最終段階に

世界で4680万人が認知症を抱えて暮らしていると言われている。英紙デイリーメールによると、英国では現在、85万人が認知症に苦しんでおり、うち3分の2がアルツハイマー病だという。2017年の英国での死亡原因で一番多かったのが、アルツハイマー病だった。

アルツハイマー病の症状を抑える薬は存在するが、病気そのものを治療する薬は今のところ存在しない。しかしまもなくこれが変わるかもしれないという。

英国の慈善研究機関アルツハイマーズ・リサーチUKがこのほど、アルツハイマー病の治療薬は3年以内、ワクチンは10年以内に入手可能になるだろうとの見解を明らかにしたのだ。

デイリーメールによると、アルツハイマーズ・リサーチUKの最高科学責任者デイビッド・レイノルズ博士は記者会見で、アルツハイマー病向けの薬12種類が現在、臨床試験の最終段階にあると説明。2021年までにはこれら「人生を変えるほどの薬」の全てにおいて、臨床試験が終了する見込みだと話した。英紙テレグラフはこれら12種類の薬が、アルツハイマー病の進行を止めたり、緩めたり、病気そのものを治したりするものだと説明している。

ワクチンでアルツハイマー病の70%が予防できる可能性

今回アルツハイマーズ・リサーチUKが行った分析調査報告書の共著者でもある、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン認知症リサーチ・センターのジョナサン・ショット教授は記者会見で、「アルツハイマー病の治療薬は、『もし入手可能になれば』ではなくて、『いつ入手可能になるか』という状況」だと説明し、アルツハイマー病が治療可能になる期待を語った。

一方でテレフラフによるとワクチンも開発されており、現在は臨床試験のフェーズ1と2にある。今回発表された報告書によると、このワクチンを使えば、アルツハイマー病の70%が予防できる可能性がある。そして将来的に、英国では50歳以上の人がアルツハイマー病のワクチン接種を受ける、という制度ができる可能性もあるようだ。

前述のデイリーメールによると、そのような制度ができた場合、年間94億ポンド(約1.4兆円)の経費が国民保健サービス(NHS)にかかってくる。しかし例えばワクチンで発症を最低3年遅らせることができれば、127億ポンド(約1.9兆円)の医療費削減が可能になるのだという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、NATOにロシア産原油購入停止要求 対

ワールド

アングル:インドでリアルマネーゲーム規制、ユーザー

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐

ワールド

台湾閣僚、「中国は武力行使を準備」 陥落すればアジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 8
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中