最新記事

中東

サウジアラビア、汚職摘発巡る動揺払拭へ企業と対話 投資継続を呼びかけ

2018年2月26日(月)16時25分

2月20日、サウジアラビアがムハンマド皇太子(写真)の主導で大規模な汚職摘発に動いたのは昨年の11月だった。写真はリヤドで2017年12月撮影。提供写真(2018年 ロイター/Saudi Royal Court)

サウジアラビアがムハンマド皇太子の主導で大規模な汚職摘発に動いたのは昨年の11月だった。それから3カ月が経過した今、サウジ当局は投資家に安心して事業を続けるよう呼び掛けている。

同国内外の投資家は長年汚職のまん延に不満を漏らしてきただけに、その対策はムハンマド氏が打ち出した包括的な経済改革の重要な要素の1つだった。ただ、王族や財界、官界の大物が次々と拘束された事態に一部の企業首脳は心中穏やかではいられなくなった。なぜなら取り締まりのプロセスが秘密に包まれ、拘束の容疑内容は少なくとも政治的動機に基づいていたからだ。

サウジと幅広く取引している西側のあるビジネスマンは「こうした状況は、サウジに投資すべきだと勧める理由にはとてもならない」と述べた。

サウジ当局は対応を誤ったとなかなか認めたがらない。それでもムハンマド氏を含む政府首脳は1月に国内の企業幹部と会談し、彼らを安心させるために摘発がほぼ終わり安全に事業を行えると説明していたことが、会談出席者から話を聞いた5人の関係者に取材して分かった。

また1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加したサウジ政府当局者は、摘発がもたらしたプラス面を強調した一方、同国の意図が幾分違って受け止められた可能性にも言及した。

カサビ商業・投資相はダボス会議で「われわれがあちこちで間違ったことは確かだ。サウジは完璧な国家ではなく、他の国と何ら変わりない。しかし成功への道は常に形成され、全体の流れはそこに向かっている」と語った。

サウジ政府の報道官はコメント要請に返答しなかったが、アル・モジェブ司法長官は汚職摘発について「独立的な司法手続き」として実行され、「透明性と開放性、適切な統治を確立するための改革の一環」だと正当さを力説した。

関係者の話では、1月の政府首脳と企業幹部の会談は首都リヤドやジッダなど各地で開催された。

一番重要なメッセージは、また大規模な摘発に乗り出すことはもはや検討されておらず、新たな取り締まりを心配していたサウジ企業界に安心感を与えることだった。関係者の1人は「反汚職キャンペーンは終わった。通常通りビジネスに従事し、サウジへの投資を続けるよう出席者に伝えられた」と打ち明けた。

もう1つのメッセージは、サウジ当局が汚職の認定を比較的狭い範囲にとどめるというもの。当局としてはサウジの商慣習を改善したいが、急激に慣習を変えて普通のビジネス上のつながりにまで打撃を与えるつもりはないという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG

ワールド

米上院議員、イスラエルの国際法順守「疑問」

ワールド

フィリピン、南シナ海巡る合意否定 「中国のプロパガ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中