最新記事

アメリカ政治

トランプ政権暴露本、この騒動の最大の敗者は誰だ

2018年2月21日(水)17時45分
マックス・カトナー

バノン直系で、アリゾナ州から上院選への出馬を目指すケリー・ワードの陣営も声明を出した。「スティーブ・バノンはケリーの数多い著名支援者の1人にすぎない。彼女は選挙戦に勝つことに集中しており、いい位置に付けている。そしてトランプ大統領がアメリカ第一主義の政策を推進するのを助けたいと思っている」

ちなみにアリゾナ州の元保安官で人種差別主義者のジョー・アルパイオ(8月にトランプが恩赦を与えた)は9日に、ケリー・ワードに対抗して立候補すると表明した。このタイミングでの出馬表明にバノン騒動がどう関係しているかは、今のところ不明だ。

関係はない、と言うのはアリゾナ州を地盤とする保守派の政治コンサルタント、コンスタンチン・ケラード。「1~2年前までは、バノンがいなくても世界は動いていた。いま起きていることの全てが彼のせいだとか、彼の影響だとか、そんなふうに考える理由が分からない」と語った。

そうは言っても、いったん色の付いてしまった候補者たちがバノンと絶縁し、あの男とは無関係だと主張するのは難しいだろう。

そもそもバノンと手を組んだ経緯を「説明するのに苦慮するはずだ」と、共和党選挙参謀のプラウドは言う(彼女はグリムのライバルであるダン・ドノバン下院議員を推している)。「不吉な前兆は見えていたのに、彼らは計算を間違った。今になって後悔していることだろう」

バノン自身の運命はどうか。バノンはインターネットメディア「アクシオス」へ送った声明で、今後も大統領を支持し続けると表明した。ただし、この声明はバノンの了解なしに誰かが出したものだとの観測もある。

「ドナルド・トランプはとても寛容な男だ」と、トランプの元側近でバノンとも親しいマイケル・カプトは言う。「信じられないなら(大統領選でトランプを支持しなかった)ミット・ロムニーやリンゼー・グラムにでも聞いてみるといい。ただしバノンは大統領の家族を悪く言ってしまった。これを許してもらうのは、比べものにならないほど難しいぞ」

本誌2018年1月23日号特集「トランプ暴露本 政権崩壊の序章」から転載

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国航空会社2社、エアバス機購入計画発表 約82億

ワールド

コロンビア、26年最低賃金を約23%引き上げ イン

ワールド

アルゼンチン大統領、来年4月か5月に英国訪問

ワールド

中国軍、台湾周辺で実弾射撃訓練開始 演習2日目
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中