最新記事

韓国政治

同盟よりも南北融和を優先? 韓国文政権は南北交渉のベテラン揃い

2018年2月19日(月)18時10分


温かい心

1980年代の韓国軍事政権時代における学生活動家の多くは、北朝鮮の国家理念である主体(チュチェ)思想を学び、共感すらしていた。これは、マルクス主義と極端な自主性を尊ぶ国家主義を組み合わせた政治思想で、金日成主席が展開したものだ。

「北朝鮮を訪れて自分の目で確認した今では、われわれもずっと懐疑的に物事を見ている」と、 元活動家で今は文大統領の与党「共に民主党」に所属する国会議員、李仁栄(イ・インヨン)氏は言う。

「われわれは、言われているような北朝鮮シンパではない。だが平和に向けて、他の人より温かい心と多くの忍耐があるのかもしれない」

人懐こい性格と秘書室長としての調整スキルで知られる任氏は、表舞台は避けつつも、政策立案から青瓦台の人事まで幅広い事案に深く関与している。

文大統領が、戦争に反対し、北朝鮮が核・ミサイル実験をやめれば対話に復帰する意思がある、などと述べた重要記念日などのスピーチは、任氏が監修した。

対話を求めて

だが政府高官によれば、任氏に対する保守派の批判を踏まえ、特使は徐長官か趙統一相の起用に傾いているという。

「多くの名前が取りざたされているが、徐氏はエキスパートで、最善の選択肢だ」と、元統一相で、南北関係について文大統領に定期的に助言している丁世鉉氏は言う。

「南北関係では、北朝鮮の言葉や、彼らの話し方、内部原理を理解することが重要だ」

徐長官は、2000年と2007年の南北首脳会談に先駆けて行われた一連の協議をそれぞれ主導している。情報機関トップとして、また文大統領は当時の盧武鉉大統領の秘書室長として、同氏は2007年の首脳会談実現に重要な役割を果たした。

大統領府は任氏について、秘書室長として期待される「自然な役割」を務めているとしたが、詳細には言及しなかった。

だが、五輪関連のデタントの舞台にまんべんなく登場した任氏の存在感は、大統領府の昼食会にしか招かれなかった鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長や、どこにも見当たらなかった他の外交や国防高官と比べて際立っている。

文大統領は、学者や過去のリベラル政権の元高官らを、外相を含めた重要外交ポストに指名している。

「統一省が今の展開を主導するのは自然なことだ。青瓦台が、これまでいつもそうだったように、全体を監督している」と、外務省高官はロイターに語った。

「われわれの仕事は、北朝鮮と米国が対話できる状況を築くことだ。道のりは長く厳しいが、そこがわれわれが役割を果たす場所だ」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Hyonhee Shin

[ソウル 15日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



SPECIAL ISSUE 丸ごと1冊 金正恩SPECIAL ISSUE 丸ごと1冊 金正恩

北朝鮮核危機 日本人が知らない全貌

Chapter 1 KIM JONG-UN

若き指導者の謎多きプロフィール

「暴君」金正恩の虚像と独裁国家の実像

最高指導者が暗殺されない理由

Chapter 2 MILITARY

ミサイル兵器は射程も脅威も拡大中

ミサイル実験「失敗」の真相

「核保有国」北朝鮮と世界は共存できるのか

北ミサイルの本当の実力は

世論に見る米核攻撃の現実味

Chapter 3 POLITICS

独裁者を悩ます中枢幹部の戦い

党大会で本格始動した正恩政権の「頼みの綱」 ほか

詳しくはこちら=>>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア西部2州で橋崩落、列車脱線し7人死亡 ウクラ

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 8
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中