最新記事

韓国政治

同盟よりも南北融和を優先? 韓国文政権は南北交渉のベテラン揃い

2018年2月19日(月)18時10分

2月12日、 平昌冬季五輪のアイスホッケー女子の試合で、統一旗を振って南北合同チームを応援する人々(2018年 ロイター/Brian Snyder)

1989年、22歳の韓国女子大学生が北朝鮮に潜り込んで半島の統一を訴え、当時の金日成主席と面会する映像は、韓国で一大騒動を巻き起こした。

韓国政府の許可なしで行われたこの訪朝を演出したのは、著名な学生民主運動家で、今では文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領の秘書室長を務める任鍾晳(イム・ジョンソク)氏だ。

30年近くを経て、現在51歳の任氏は平昌冬季五輪を舞台とした韓国と北朝鮮のデタント(緊張緩和)で中心的な役割を果たしていると、政府関係者や専門家は指摘する。

リベラルな文大統領は、10年近く続いた韓国の保守政権や、北朝鮮の核・ミサイル開発加速によって悪化した南北関係の再構築に向けて、任氏のほか数人の重要プレーヤーを頼みにしているという。

だが韓国内の懐疑派にとって、任氏は、米国との緊密な同盟関係よりも、南北再接近を優先しているのではないかという懸念の中心にいる人物だ。すでに、冬季五輪が北朝鮮プロパガンダの道具に利用されていると、彼らは心配している。

特使か

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が先週、サプライズで文大統領の訪朝を要請したことを受け、この提案を協議するための北朝鮮特使として、任氏の名前が取りざたされている。

他に、韓国国家情報院の徐薫(ソ・フン)長官や、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相なども候補として検討されていると、韓国政府高官は明らかにした。両氏とも、過去に対北朝鮮緊張緩和の「太陽政策」を進めたリベラル政権で役職を務めた経験がある。

金正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)氏らを迎えて10日、韓国大統領府(青瓦台)で開かれたた文大統領主催の昼食会に、任氏は満面の笑顔で出席していた。任氏は翌11日、与正氏ら代表団の送別夕食会を開いた。

「今日はただ、くつろいで食事を楽しんでください」。任氏がゲストにそう語りかけていたと、出席した大統領府高官は言う。

任氏は学生時代、女子大学生を北朝鮮に送り込み、国家安全保障関連法に違反したとして、3年半服役した。女子大学生自身も、帰国と同時に逮捕された。

任氏は本記事向けのコメントの要請には応じなかったが、自身や仲間の元学生活動家が親北朝鮮だとする批判には反撃している。

「あなたが名前を挙げたほとんどの人(元活動家)は、民主化のために命を賭けて戦った。私は、恥ずべき人生は歩んでいない」と、任氏は昨年11月に国会で語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中