最新記事

株式市場

株価崩壊は当然だ──アメリカの好景気はフェイクだった 

2018年2月9日(金)17時30分
ジョナサン・ニューマン

■中央銀行の介入

金融市場から流れる情報に従っていれば、最も生産性の高い方法で効率的に資本を分配できる。それが混乱するのは、中央銀行が介入するからだ。

FRBが量的緩和を実施すると、市場に過剰資金が溢れて金利を押し下げ、企業も人も実際より多くの資本があるように錯覚する。企業は資金調達して雇用を増やし、工場や機械などのあらゆる資本財を新たに購入する。消費者も同様に、低金利を利用して住宅や車など、さまざまな消費財をローンで買う。

見た目には万事が順調だ。事業拡大で雇用は増加。新規雇用が増えればその分賃金も増える。個人消費が活発な間は在庫も飛ぶように売れる。その流れに乗って株価も上昇する。好調な企業業績を見た投資家が買い増しに動き、株価は史上最高値を更新するだろう。

アマチュア投資家も参入しやすくなる。賃金が上がったうえ、万事が順調な時は外れくじを引く方がかえって難しいからだ。

■金融緩和の副作用

いつまでもそんな好循環が続くだろうか? そうはいかない。

我々は過剰な生産や消費をしてきたのだ。企業も事業判断を誤らされていた。市場から誤った情報を受け取ったために、より高いリスクを負ってしまった。人工的に安くなった資金は、真に入手可能な資本の量を見誤らせる。3つの事業ができそうだと思ったが、実際には1つ分の資源しか手に入らない。

今は、信用の蛇口が絞られてバブルがはじけ、人々が改めて自分のお金の使い方を見直し始めたところだ。

景気失速は失業や倒産の増加、株価の下落などを伴うが、自分たちの事業計画や支出を現実に即して見直すための健全なプロセスだ。

■結論

株式市場は、今の我々もバブル崩壊に向かっていると言っているのだろうか? それとも調整を経て、安定した持続可能な経済成長路線に乗ることができたのか? それは今日時点ではわからない。

はっきり言えるのは、10年にわたる株価の好調が、持続可能性と生産性をベースにした新しい時代を反映したものではありえないということだ。実際、数々の株価指数は、FRBが緩和したお金の分だけ上昇したのだ。

あれほどの緩和と実質的なゼロ金利をやったのだから、企業業績も雇用データもよく見えるのは当然だ。それがあっという間におじゃんになったからといって、驚いてもいけない。

(翻訳:河原里香)

This article first appeared on the Foundation for Economic Education site.
Jonathan Newman was the Online Learning Manager at FEE.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国から訓練の連絡あったと説明 「規模

ワールド

インドネシアとの貿易協定、崩壊の危機と米高官 「約

ビジネス

来年はボラティリティー高く利益上げるチャンス、資産

ビジネス

航空業界、機体確保に障害でも来年過去最高益 IAT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 9
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中