最新記事

再生医療

マックフライに使う物質で毛髪再生に大成功

2018年2月6日(火)15時00分
クリスティナ・ツァオ

こんなところに育毛の有望な物質があったなんて Bobby Yip-CHINA REUTERS

<日本の科学者が、脱毛症(禿げ)の治療法を発見したかもしれない。秘密は、マクドナルドがフライドポテトを作る際に使っている化学物質にあるという>

マウスの毛の再生を試みた横浜国立大学の研究チームは、「ジメチルポリシロキサン」というシリコンの一種で、マクドナルドがフライドポテトを揚げる際に、油が泡立つのを防ぐために加える化学物質を使った。

予備的実験によると、この方法は、人間の皮膚細胞に用いた場合でも成功する可能性が高いという。

2月1日付けで学術誌バイオマテリアルで発表されたこの研究によると、研究者らは、全く新しい方法で「毛包原基(HFG)」の大量作製をするというブレークスルーに成功した。

毛包原基は、毛包(毛を産生する器官。毛包のうち、皮膚表面から見ることのできる部分は一般に毛穴と呼ばれている)の発達を促す細胞であり、脱毛研究の重要なカギだ。研究者たちによれば、ジメチルポリシロキサンを使用したことが今回の成果を決定づけたという。

ネズミの背中に毛が生えた

研究を行った横浜国立大学の福田淳二教授は論文の中で、「毛包原基を大量作製するためのカギは、培養器に使う基材を何にするかということだった」と論文で述べている。「培養器の底に、酸素透過性の高いジメチルポリシロキサンを使ったところ、大変うまくいった」

研究チームはこのやり方で、5000の毛包原基を一度に作製した。次に、毛包原基チップ(「ウェル」と呼ばれるマイクロサイズの孔が約300あるマイクロウェルアレイに、毛包原基を並べたもの)を用意し、それをマウスの体に移植した。

「一様に並べられた毛包原基を、毛のないマウスの背中に注入したところ、有効な毛包となって毛穴を作れることが示された」と福田は述べる。

福田と研究チームは、その数日以内に、チップを移植したマウスの背中の部分に黒い毛が生えているのを確認した。

practicalhai.jpg
下はマウスの背中に生えた黒い毛 写真は横浜国立大学

「このシンプルな方法はきわめて有効で期待できる」と福田は話す。「このテクニックが毛髪再生医療を進歩させ、男性ホルモン型脱毛症といった脱毛の治療に役立つことを期待している」

2016年のアメリカにおける脱毛治療薬製造業界は60億ドル規模だった。その売り上げには、毛髪回復のための植毛といった毛髪再生施術も含まれている。研究が発表された当時、本誌はマクドナルドにコメントを求めたが、回答は得られていない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

為替介入「当然考えられる」と片山財務相、無秩序なら

ビジネス

債務残高、対GDP比率引き下げて発散しないようにす

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は予想上回る 25年

ビジネス

AIブームが新リスク、金融業界からは買収の高プレミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中